十一試特殊水上偵察機

十一試特殊水上偵察機について

十一試特殊水上偵察機（じゅういちしとくしゅすいじょうていさつき）は、日本海軍によって夜間偵察任務のために開発された航空機です。この機体は、川西航空機と愛知航空機の二社によって試作され、その結果、愛知の機体が1938年に九八式水上偵察機として正式に採用されることとなりました。

開発の背景

1936年、日本海軍は九六式水上偵察機の後継機の開発を命じ、川西と愛知の両社に対して「十一試特殊水上偵察機」の名称で発注しました。愛知は従来の機体をさらに洗練させた複葉式の飛行艇を製作したのに対し、川西は前回の競作で敗れた経験を活かし、独自の斬新な設計に挑みました。

川西の機体は単葉式の飛行艇で、全体に細身で丸みを帯びた形状が特徴です。また、ガル型の主翼を肩翼式に取り付け、胴体上部には櫓式の支持架を設け、推進式で配置された九一式二二型液冷エンジンが搭載されました。翼端には補助フロートがついており、飛行中は空気抵抗を減少させるために外側に引き上げられるような設計がなされています。

比較審査と性能の評価

試作1号機は、1937年6月に完成し、愛知製の機体と共に海軍による比較審査が行われました。この審査では、川西の奇抜なデザインは注目を集めましたが、速度性能は愛知機よりわずかに優れているものの、操縦性や安定性において大きな問題が発覚しました。特に夜間の操作には致命的とされ、これが不採用につながりました。加えて引き上げ式の翼端フロートは複雑な構造で整備に手間取り、性能向上に寄与しませんでした。

結局、川西の試作機は2機のみ製作され、その後は正式採用に至らなかったため、試作機の価値が大きく評価されることはありませんでした。

改造と再利用

試作された2機はその後、海軍に引き渡され、いくつかの改造が施されました。陸上用の引き上げ式車輪を追加するなどし、特に要人輸送や連絡任務に使用されるようになりました。この際に機体の名称は「九六式輸送機」や「九七式輸送機」とされましたが、公式文献ではそれぞれの原型機に基づいた名称が設定されています。

機体スペック

• - 全長： 11.90 m (11.80m)
• - 全幅： 16.19 m (16.00m)
• - 全高： 4.50 m (4.40m)
• - 主翼面積： 38.0 m²
• - 全備重量： 3,300 kg (3,860kg)
• - エンジン： 愛知九一式一型水冷W型12気筒620hp
• - 速度： 231 km/h
• - 航続距離： 1,519 km (8.4h)
• - 実用上昇限度： 3,795m
• - 武装： 7.7 mm機関銃 × 1
• - 乗員： 3名

結論

十一試特殊水上偵察機は、その独自のデザインと試みが評価されたものの、性能面での不備が影響し、正式な採用には至りませんでした。それでもなお、当時の航空技術の進歩や開発過程において貴重な経験を提供した機体として記憶されています。

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