十二月の旅人

太田裕美が1980年に発表した、通算13枚目のオリジナルアルバムが『十二月の旅人』（じゅうにがつのたびびと）です。本作は、彼女のキャリアにおける重要な時期の一枚として位置づけられます。

制作背景とタイトル変更

このアルバムが制作された時期、太田裕美のアルバムには、既にシングルとして発表された楽曲を収めないという方針が続いていました。しかし、『十二月の旅人』においては、その慣例が覆される出来事がありました。ヒットシングル「さらばシベリア鉄道」を急遽収録することが決定したのです。この変更は、アルバム全体の構成やコンセプトにも影響を与え、当初『海に降る雪』として企画されていたアルバムタイトルも、『十二月の旅人』へと改められることとなりました。このエピソードは、当時の制作現場における柔軟性や、作品の完成度を高めるための判断があったことを示唆しています。

歌詞カードの特別な趣向

また、このアルバムの魅力の一つとして、歌詞カードが太田裕美本人による手書きであった点が挙げられます。アーティスト自身の筆跡がそのまま反映された歌詞カードは、作品に込められた想いや雰囲気をより一層ファンに伝える特別な要素となっています。

収録曲

『十二月の旅人』には、多彩な作家陣による楽曲が収められています。特に注目されるのは、「さらばシベリア鉄道」が収録されたことです。この楽曲は、作詩を松本隆、作曲を大瀧詠一、編曲を萩田光雄が手がけた、彼女の19枚目のシングル曲であり、後世にも歌い継がれる名曲です。

その他の収録曲は、大きく二つのグループに分けられます。

小此野木七枝子作詩、網倉一也作曲、萩田光雄編曲による楽曲
Sail for Our Life
25年目の冬に
海に降る雪
少女憧憬
メロディー・スモーキン

山川啓介作詩、浜田金吾作曲、飛澤宏元編曲による楽曲
City Lights
ら・ぼえーむ
スナック“シェルブール”
青春のキャスティング
HAPPY BIRTHDAY TO ME （「さらばシベリア鉄道」シングルB面曲）

これらの楽曲は、当時の多様な音楽スタイルを取り入れつつ、太田裕美の世界観を表現しています。

その後の展開

1980年という時代は、日本の音楽シーンにおいて様々な変化が見られた時期であり、本作もその潮流の中で生まれた作品と言えます。発表から時を経て、このアルバムは1998年にはCD化され、新たな世代の音楽ファンにも聴かれる機会を得ました。アナログレコード時代の名作が、デジタル形式で再び世に送り出されたことは、その音楽的価値が認められた証とも言えるでしょう。『十二月の旅人』は、単なる一アルバムとしてだけでなく、制作のエピソードや手書き歌詞カードといったパーソナルな要素、そして時代を代表するクリエイターたちの参加によって、今なお多くのファンに語り継がれる作品となっています。

関連項目

* 1980年の音楽

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