十字キー

十字キーとは

十字キーは、主にゲーム機のコントローラや携帯電話、リモコンなどで使用され、コンピューターやゲーム内におけるカーソルや、プレイヤーが操作するキャラクターの移動に使われるキーやボタンの総称です。

概要

コンピュータにおける方向キーと同じ働きをしますが、上下左右に配置された4つのスイッチの上を十文字のカバーが覆っているのが特徴です。十字の中心には支点があり、カバーがシーソーのように動くことで、上と下または左と右のスイッチが同時に押せないようになっています。斜めに押すことで、隣り合う2つのスイッチを同時に押せるため、8方向の入力が可能です。基本的に親指で操作します。

名称

任天堂としての公式名称は「十字ボタン」です。AV仕様ファミリーコンピュータやニンテンドー ゲームキューブ、ニンテンドー3DSなどの取扱説明書では、「十字ボタン」と記載されています。一方、任天堂以外のメーカーでは「十字キー」、「方向キー」、「方向パッド」などの名称が用いられます。英語圏では「directional pad」（方向パッド）を略して「D-pad」（Dパッド）や、「control pad」（コントロール・パッド）と呼ばれます。

歴史

前史

十字キーの前身は、アーケードゲーム（UPLのブロッケード（1976年）やSNKのヴァンガード（1981年）など）で使われた4つの方向ボタンでした。家庭用ゲーム機では、マテルが1980年に発売したインテレビジョンが、ジョイスティックに代わる方向キーを初めて採用しました。円形のパッドを親指で押すことで16方向の入力が可能でした。エンテックスのセレクト・ア・ゲームも、上下左右の方向ボタンが特徴的でした。同様の方向ボタンは、アタリ2600の前身であるアタリ・ゲームブレインや、VideoMaster Star Chess gameのような初期の専用ゲーム機でも使用されました。ミルトン・ブラッドリー・カンパニーの携帯型ゲーム機、Microvision用のソフトとして1981年に発売された"Cosmic Hunter"では、十字キーに類似したコントローラが使用されました。

任天堂の「十字ボタン」登場以降

十字キーは、任天堂の横井軍平によって、1982年発売のゲーム&ウオッチ『ドンキーコング』のために開発されました。澤野貴夫による提案がきっかけでした。それ以前と同様の分離した方向ボタンを採用したゲーム&ウオッチも発売されましたが、十字キーを採用したタイトルの方が人気を集めました。任天堂は十字キーの実用新案権を取得し、技術・工学エミー賞を受賞しました。1984年には、エポック社が携帯型ゲーム機「ゲームポケコン」を発売しましたが、人気が出ず短期間で市場から姿を消しました。

コンパクトながら親指だけで4方向にキーを押す感覚が伝わる画期的な操作性は、携帯型ゲーム機だけでなく据え置き型ゲーム機にも適していると判断され、ファミリーコンピュータなどの家庭用ゲーム機にも搭載されました。その後、任天堂以外の会社のものも含めて、主要なテレビゲーム機には十字キーが装備されました。ただし、アーケードゲームでは主としてジョイスティックが使用されています。

最新のゲーム機では、十字キーの他に親指で操作するアナログスティックがついているものもあります。アナログスティックはNINTENDO 64で初めて採用され、ゲームによってはどちらかだけで操作した方が良い場合もあります。アナログスティックを使うゲームの多くでは、十字キーは方向指示以外の用途で使われます。例えば、Wiiの『スーパーマリオギャラクシー』では、移動操作はヌンチャクのコントロールスティックを用い、Wiiリモコンの十字ボタンは視点切り替えに使われます。

基本的には一つの機器に一つですが、例外として任天堂のバーチャルボーイのコントローラーは2つ装備しており、ゲームによって両方または片方を使用します。

任天堂ではファミコン以降のハードに十字ボタンを伝統的に採用し続けてきましたが、2017年に発売されたNintendo Switchに付属されているコントローラーであるJoy-Conには十字ボタンは装備されておらず、スティックキーが装備されています。ボタンはひし形上に配置され、十字ボタンの役割を果たしています。2019年に発売された廉価版モデルであるNintendo Switch Liteや、周辺機器のNintendo Switch Proコントローラーなどには十字ボタンは装備されています。

ゲーム機以外での利用

十字キーは、メニューから動作を選択する方式の装置で単純な操作用のボタンとしても使われます。ゲーム機のようなリアルタイムの操作のために最適化する必要はなく、斜めの方向を指示することもできません。多くの場合、十字キーの中央に「決定」「OK」などと書かれたメニューを実行するためのボタンがついています。十字キーではなく、上下・左右の1軸方向の2つのボタンがついているものもあります。

実用新案権

十字キーについては、1982年に任天堂が実用新案権登録出願を行い、1992年に「方向性スイッチ」という名称で実用新案権を取得しています。ただし、これは十字キーそのものについての包括的な権利ではなく、特定の構造の十字キーについてのものでした。そのため、他のメーカーはこの実用新案権を侵害しないように、任天堂とは構造の異なる十字キーを採用する場合が多かったようです。当時の実用新案権の存続期間は出願から12年間であったため、この権利は1994年に消滅しています。

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