十字軍の王シーグル

エドヴァルド・グリーグ『十字軍の王シーグル』について

『十字軍の王シーグル』（Sigurd Jorsalfar）作品22は、ノルウェーの作曲家エドヴァルド・グリーグが、ビョルンスティエルネ・ビョルンソンによる同名の戯曲のために作曲した劇音楽です。この作品は、11世紀から12世紀にかけてノルウェー十字軍を率いた国王シーグル1世（Sigurd I Jorsalfar, 1090年頃 – 1130年）を題材としており、彼の波乱に満ちた生涯と勇壮な戦いを音楽で表現しています。

日本語では、『十字軍の戦士シグール』、『シグール・ヨルサルファル』といった訳題も用いられています。

作曲の経緯

1872年に劇音楽として作曲されました。その後、1892年にオーケストラ組曲として編曲され、演奏会用としても親しまれるようになりました。さらに1903年には、シュトゥットガルト宮廷劇場での公演のために、一部の曲が追加されています。

初演

1872年4月10日に、クリスチャニア（現在のオスロ）の王立劇場にて、ヨハン・ヘンヌムの指揮によって初演されました。

編成

管弦楽編成は、フルート3、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ、ティンパニ、大太鼓、小太鼓、シンバル、トライアングル、ハープ、弦五部という大規模なものです。また、「北国の民」と「王の歌」では、男声（テノールまたはバリトン）独唱と男声合唱が加わり、荘厳な雰囲気を醸し出します。当初、作品22として出版されたのは、この2曲のみで、後に組曲（作品56）が別に出版されました。

構成

1903年の追加によって、以下の構成となっています。さらに、ホルンによるファンファーレや、第2幕でのラッパのシグナルが加えられています。

番号外
ホルンによるファンファーレ
第1幕
1. 第1幕への前奏曲
2. ボルグヒルの夢（間奏曲） - 組曲第2曲に使用
第2幕
3. 力比べ（王の広間にて、第2幕への前奏曲）- 組曲第1曲、中間部はヴァイオリンとピアノのためのガヴォットからの転用
4. 北国の民
第3幕
5. 忠誠行進曲（第3幕への前奏曲）- 組曲第3曲に使用
6. 間奏I
7. 間奏II
8. 王の歌

組曲 作品56

劇音楽から3曲が選ばれ、組曲としてまとめられています。

1. 力比べ（王の広間にて）
2. ボルグヒルの夢（間奏曲）
3. 忠誠行進曲

作品の特徴

『十字軍の王シーグル』は、グリーグの作品の中でも特に劇的な要素が強い作品です。勇壮な行進曲や、抒情的な旋律が組み合わされており、北欧の雰囲気を色濃く感じさせます。組曲版は、演奏会でもよく取り上げられる人気のある作品です。劇音楽版は、より物語の内容に沿った音楽を楽しむことができます。

参考文献

作曲家別名曲解説ライブラリー18　北欧の巨匠（音楽之友社）

外部リンク

* Sigurd Jorsalfarの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)


この作品は、グリーグの音楽の魅力を存分に味わえるだけでなく、ノルウェーの歴史や文化にも触れることができる貴重な作品と言えるでしょう。

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