十年 (2015年の映画)

『十年』について

『十年』（じゅうねん）は、2015年12月に公開された香港映画であり、タイトルは英語では「Ten Years」と表記されます。この作品は、5人の若手映画監督が参加し、2025年に設定されたディストピア的な香港を描くオムニバス形式の映画です。最初は1館の映画館での上映に限られていましたが、口コミによる評価の高まりから、次第に香港全土で広く上映されるようになりました。

公開と評価

この映画は、自主制作でありながら、上映初日の2015年12月17日から短期間のうちに印象的な興行成績を記録しました。制作費は短編5話の合計で50万香港ドルでありましたが、2016年の2月までの香港での興行収入は、なんと600万香港ドルを超え、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒|スター・ウォーズ_フォースの覚醒』の成績を上回る結果となりました。また、2016年の第35回香港電影金像奨では最優秀作品賞を受賞し、映画の質の高さが公式に認められました。

一方で、この映画は批判も受けています。中国の国営メディアは本作を「思考のウイルス」と呼んで酷評し、香港電影金像奨のネット中継を予定していたテンセントが、本作のノミネートを受けて中継を取りやめるといった事態も発生しました。

各話の概要

『十年』はオムニバス形式であり、それぞれの短編が異なるテーマを扱っています。以下は主要な短編の紹介です。

1. エキストラ（中国語: 浮瓜、英語: Extras）
監督：クォック・ジョン（郭臻）

2. 冬のセミ（中国語: 冬蟬、英語: Season of the End）
監督：ウォン・フェイパン（黄飛鵬）

3. 方言（中国語: 方言、英語: Dialect）
監督：ジェヴォンズ・アウ（歐文傑）

4. 焼身自殺者（中国語: 自焚者、英語: Self-Immolator）
監督：キウィ・チョウ（周冠威）

5. 地元産の卵（中国語: 本地蛋、英語: Local Egg）
監督：ン・ガーリョン（伍嘉良）
この短編は、2025年の香港で「本地」という言葉が禁じられているという設定です。物語では紅衛兵を模した少年団が市民を監視し、禁句を使用する者を取り締まります。「地元産の卵」を販売する雑貨店も珍しくなく、当局による圧力から卵を生産していた農家も業務を停止せざるを得なくなる展開が描かれています。この作品は、愛国教育の導入とそれに対する反発を背景に製作されました。

賞歴と国際プロジェクト

『十年』はその影響力から、国内外で注目され、関連プロジェクトが進行しました。日本、タイ、台湾の制作による『十年 日本（仮）』『十年 タイ（仮）』『十年 台湾（仮）』がそれぞれ公開され、各国の10年後を描きました。

日本版の概要

『十年 Ten Years Japan』は2017年に釜山国際映画祭で制作が発表され、是枝裕和が製作総指揮を務めました。各短編監督は次の通りです：
早川千絵「PLAN75」、木下雄介「いたずら同盟」、津野愛「DATA」、藤村明世「その空気は見えない」、石川慶「美しい国」。

タイ版・台湾版の概要

タイではアーティット・アッサラットが製作兼監督を務め、複数の監督が参加しました。また、台湾版にはリナ・ソウやペイジュ・シーなど多くの監督が関わっています。

『十年』は、政治や社会への問題提起を独自の手法で行った映画であり、今後もその影響が続くことが期待されます。

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