十年式信号拳銃

十年式信号拳銃の概要

十年式信号拳銃は、大日本帝国の重要な軍事装備の一つであり、陸軍が使用した唯一の信号拳銃です。この信号拳銃は、特に部隊間の通信や緊急時の合図を行うために設計されました。

開発の経緯

この拳銃の開発は、1918年の末に始まりました。初期の設計では口径26mmを予定していましたが、光量不足の問題から、新たに口径35mmに変更されました。1919年9月、試作銃が完成し、その後の研究において発射時の信号弾の点火方式も改良されました。発射後50mの距離を飛ばした後に点火する新形式が採用され、より安全な運用が実現しました。

設計の特徴

十年式信号拳銃は、ダブルアクションタイプの単発拳銃であり、中折れ式の仕組みを取り入れています。この設計により、発射後は自動的に薬莢を排出し、次の発射に備えます。また、携帯の便を考え、本体は専用の袋に収納し、肩にかけることができるようになっています。信号弾の装填が不安定な場合、銃身のラッチが撃鉄の前進を妨げ、信号弾の信管を打撃できない安心設計です。

信号弾は、全体で150-200gという軽量さで、推薬として小粒薬2gを使います。信号弾には、中に緩燃導火索が封入されており、これが信号弾を点火する役割を果たします。使用する信号弾には、発光を示す色分けが施されており、昼夜問わず視認性を高めています。

信号弾の種類としては、「龍」や「吊星」、そして「流星」があります。昼間の視認距離は最大で4000m、良好な天候条件下では8000mにも達することが可能です。特に夜間では、25000mの距離からでも識別できます。

運用と配備

1921年に制式化された十年式信号拳銃は、陸軍の地上部隊や航空隊に配備されました。しかし、信号弾が同時に別の装備でも使用可能であったため、拳銃自体の配備数は限られました。航空機に搭載されることが多く、戦争中には、米軍によって救難信号用武器としても認識されていました。また、海軍においても信号としての使用があり、真珠湾攻撃時には、攻撃合図として使われました。

生産と流通

生産は戦争終結まで継続され、約7800丁の拳銃が製造されました。この武器は、その運用数が少なく、機密性や緊急度が低いため輸出も行われたことがあります。1935年には日本軍の武器輸出カタログにも掲載され、その価格は125円でした。1943年には信号弾の単価が確認され、色によっても価格が異なることがわかりました。

信号拳銃は、一般的な火器とは異なる特性を持ちつつ、部隊間での重要な通信手段として位置づけられていました。このような文脈から、十年式信号拳銃は大日本帝国の軍事史において、ひとつの重要な役割を担った装備と言えるでしょう。

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