十年式手榴弾

十年式手榴弾の概要

十年式手榴弾は、1921年に大日本帝国陸軍によって開発された手榴弾で、日露戦争以降に制式化された手榴弾の後継モデルです。この弾薬は、第一次世界大戦中に他国で使用された手榴弾の技術を基に研究されました。その初期段階では三八式歩兵銃用の小銃擲弾としての利用が推奨されていましたが、実戦においてはその設計が不向きであることが判明しました。これを受けて、陸軍はドイツ軍の信号弾発射機を参考にし、新たに設計した擲弾筒「十年式擲弾筒」と合わせて使用するために正式に十年式手榴弾を採用しました。

特徴

この手榴弾は、発火用の信管と推進用の装薬室を本体の上部と下部に装着した設計になっており、爆発後の破片が効果的に飛散するように溝が施されています。信管は真鍮で作られ、暴発を防ぐための安全対策が講じられています。特に、信管部分は安全栓で保護されており、使用時には安全性が確保されています。

用途

十年式手榴弾は近距離の敵に対しては手投げで使用し、さらに遠距離の場合は擲弾筒を利用する設計です。擲弾筒からの射出時には最大220メートルの射程を持ち、手投げ時には装薬室を外すことも可能ですが、通常は装薬室を付けた状態での投擲が推奨されました。また、炸薬の効果を最大限にするため、爆発までの遅延時間は6.5秒から7.5秒と設定されていました。

構造

十年式手榴弾は、弾体、炸薬、信管、起爆筒、装薬筒から構成され、全備弾量は約540グラムです。弾体は鋳鉄製で、外面には破片が均一に飛散するように筋目が施されています。信管部分は流線形の管状で、内部には安全装置や撃針、ばねが含まれます。信管による爆発は、雷管に衝撃を与えることで起こり、所定の時間内に発火する仕組みになっています。

機能と使用方法

発火の手順は、最初に信管に装着された安全栓を抜き、次に被帽を叩くことで撃針が雷管を発火させます。これにより内部の火道に伝わり、投擲後に手榴弾が爆発する仕組みです。また、擲弾筒での使用においては、装薬室を擲弾筒の内部に挿入し、撃針で雷管を叩くことで誘発されます。

性能

十年式手榴弾は、半径5メートルの範囲で殺傷力を持ち、距離によって破片の密度が変わります。また、危害を及ぼす破片の飛散範囲は最大300メートルであり、使用時には自身の安全も考慮する必要があります。

保管と輸送

手榴弾は火薬や雷管などのパーツに分解して保管され、現場に交付される際には全部品が組み立てられます。これは外部からの影響を最小限に抑えるためです。また、撃針は安全な位置に保持され、保護処理が施されています。

派生型

演習用として、十年式手投演習用曳火手榴弾や、擲弾筒で使用するための十年式発射演習用曳火手榴弾が開発されました。これにより、訓練や実戦における運用効率が向上しました。

このように、十年式手榴弾はその設計において様々な技術を取り入れ、兵士に多様な戦闘手段を提供しました。

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