十年式擲弾筒

十年式擲弾筒（じゅうねんしきてきだんとう）

十年式擲弾筒は、日本陸軍において使用された擲弾発射器です。この装置は、軽量でありながら様々な弾薬を発射する能力を持ち、特に信号弾や照明弾の発射器として重宝されました。

基本情報

• - 全長: 525mm
• - 筒身長: 249mm
• - 本体重量: 2.6kg
• - 口径: 50mm
• - 最大射程: 175m

開発の経緯

当初、日本陸軍は小銃擲弾用の曳火手榴弾を開発するを目指していましたが、三八式歩兵銃での弾薬の実用化が難しいことが判明します。それに伴い、独自の発射器、すなわち擲弾筒の必要性が叫ばれるようになりました。
大正10年（1921年）に仮制式が定められ、数回の改正を経て大正14年（1925年）に正式に制式化されました。この年から生産が開始され、昭和12年（1937年）までに約7000挺が製造されることとなりました。

構造と機能

十年式擲弾筒は、滑腔砲身を備えたシンプルな構造であり、全体の重さはわずか2.6kgです。この軽さは小銃の約半分に相当し、携帯性にも優れています。兵士は筒身、桿槓、駐板を分解し、組み合わせることでコンパクトに収納できるため、持ち運びも容易でした。また、この裝置は十年式手榴弾や九一式手榴弾以外にも、各種の信号弾や照明弾、発煙弾を発射できるよう設計されています。

射程の調整は筒身後部に設けられた円筒を回すことで行われ、ガス漏孔分画（射距離調節機構）を増減させます。このガス漏孔には、通常の射撃用の下方分画と、手榴弾を目標の上空で破裂させるための上方分画の2種類が存在しており、用途に応じて使い分けることができます。ガス漏孔を絞ることで発射薬の燃焼ガス圧が増し、射程が延びる仕組みになっています。最大射程は、十年式手榴弾を使用し、仰角を45度に調整した場合に175mに達します。

性能と批評

しかし、十年式擲弾筒にはいくつかの大きな問題がありました。距離を目測する際の設定が複雑で、手榴弾の弾道特性も改善の余地が多くあったため、結果として命中率が非常に悪く、「景気づけの花火」と揶揄されることもありました。それでも、後に開発された八九式重擲弾筒が他国の小型迫撃砲と比較して高い実用性を示す礎を築いたことから、十年式擲弾筒は貴重な経験を陸軍に提供したと言えます。

引退後の役割

八九式重擲弾筒の登場によって、十年式擲弾筒は歩兵部隊から徐々に撤退しましたが、その後は砲兵や車両部隊において、信号弾や照明弾の発射器として広く活用され続け、第二次世界大戦が終わるまでその役割を果たしました。

関連項目

• - グレネードランチャー
• - 八九式重擲弾筒
• - 大日本帝国陸軍兵器一覧

このように、十年式擲弾筒は日本陸軍の兵器の中で重要な位置を占め、特にその後の技術革新への道を切り開いた装置として記憶されています。

もう一度検索