八九式重擲弾筒

八九式重擲弾筒

八九式重擲弾筒は大日本帝国陸軍のために1920年代から1940年代にかけて開発された軽迫撃砲です。小隊での運用を目的に設計され、射程や命中率を大幅に改善した兵器として位置づけられます。

開発の経緯

開発は1922年に始まり、当初は十年式擲弾筒の欠点を補う形で進行しました。この十年式擲弾筒は、射程不足や命中率の低さから使いにくいとされ、陸軍側でもその改善が急務とされていました。試製品が完成したものの、1923年の関東大震災によって開発は一時停止しましたが、11月には兵器研究方針が決定され、開発が再開されました。

1926年から1930年にかけて陸軍歩兵学校での実用試験が行われ、1929年に修正版の試製品が完成しました。制式名称が「八九式」となったのは、皇紀2589年に由来し、1932年に正式に制式化されました。生産は1932年から1945年まで行われ、約12万挺が製造されました。

形状と構造

八九式重擲弾筒は太い筒身と細い柄槓（支柱）、加えて駐板（台座）から成り立っています。形状については十年式擲弾筒と似ていますが、運搬の際は分解を必要とせず、主に設置後に射撃を実施する構造が採用されています。

射撃時は、湾曲した駐板を地面に接触させ、筒身を目分量で45度の仰角に調整、さらに整度器を利用して射距離を設定します。発射は柄槓に沿った引鉄を使用し、体重を利用して安定させることが重要です。

この設計により、同じ弾薬であっても射程が調整可能という利点がありましたが、水平でない角度で発射した場合には事故が多発する難点もありました。

弾薬と運用

八九式榴弾弾薬を使用し、これは十一年式曲射歩兵砲用の榴弾をスケールダウンしたもので構成されています。その他、手榴弾も発射可能ですが、射程は劣ります。また、発煙弾や演習用弾も利用され、実戦において多様な運用が可能でした。

アメリカ軍兵士は、鹵獲した擲弾筒を「ニー・モーター」と呼び、誤った発射姿勢で使用し怪我をした例もあったほどです。これは、台座が太腿にフィットすることから誤解を生んだものです。

編制と運用

八九式重擲弾筒は1個小隊に1～3本配備され、通常は2人1組で運用されました。各班は弾薬を持ち運ぶ役割も担い、3人での運搬が基本となっていました。戦闘においてその威力や運用性の高さから恐れられ、沖縄戦でもその効果が証明されています。

評価と影響

沖縄戦では特にその運用が注目され、敵兵に対する効果的な支援として記録されています。米軍はこの弾薬がもたらす威力に対し高い警戒心を抱いていました。

八九式重擲弾筒の設計は、他国にも影響を与え、中華民国やイギリスなどで同様の兵器の開発を促進する要因となりました。特に中華民国の二七式擲弾筒は、その直接的な影響を受けたとされています。

著作とメディア

八九式重擲弾筒は、いくつかの映画やドラマにも登場しています。1959年の映画『独立愚連隊』や、アメリカの『ウインドトーカーズ』などで描かれています。最近ではゲームなどにも取り上げられ、歴史的な兵器としての認識が広まっています。

このように、八九式重擲弾筒は日本陸軍の兵器の中で重要な位置を占めており、その技術的な特徴や運用方法は、今なお多くの研究者や愛好者によって探求され続けています。

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