十月詔書

十月詔書について

十月詔書（じゅうがつしょうしょ）は、1905年10月17日、ロシア皇帝ニコライ2世によって発せられた重要な詔勅です。この詔書は、日露戦争に伴う社会不安を解消することを目的に作成されました。正式名称は「国家秩序の改良に関する詔書」であり、歴史的にはロシア第一革命の一環として位置づけられています。起草者には、当時の首相セルゲイ・ウィッテと彼の側近であるアレクセイ・オボレンスキーが名を連ねています。

歴史的背景

1905年、ロシア帝国は日露戦争の敗北を受けて激動の時代を迎えます。この年の1月には血の日曜日事件が発生し、数カ月内にはモスクワ総督セルゲイ大公暗殺や戦艦ポチョムキンの反乱といった重大事件が続出しました。これらの事件は全国規模での混乱を引き起こし、10月にはゼネラル・ストライキが発生し、さらなる社会的不安を助長しました。

皇帝ニコライ2世は、内相アレクサンドル・ブルイギンを通じて「ブルイギン宣言」を発布し、事態の収束を図ろうとしましたが、約束された国会（ドゥーマ）の権限に対する不満は高まり、国民の反発を招く結果となりました。そんな中、ウィッテは政局の収拾を担い、詔書の起草に立ち上がります。彼は自身の意見を盛り込むことで、最終的に皇帝を説得し、十月詔書の発表へとこぎ着けました。

十月詔書の内容

十月詔書には、主に以下の三つのポイントが示されています。まず、国民の人格の不可侵や良心の自由、言論や集会、結社の自由が約束されている点です。次に、国会（ドゥーマ）選挙への参加を広く認めることが記され、選挙権の拡大と普通選挙の導入を約束しています。そして最後に、国会の承認がない法律は無効であること、国会議員による行政行為の監視権限が付与されることが明示されています。これによりロシアは立憲制への大きな一歩を踏み出すこととなりました。

この詔書は、長い間専制政治に苦しんできたロシア国民に対して、憲法の実現を告げる先駆と見なされました。実際、詔書の公布は自由主義者たちに希望をもたらし、穏健派の結成や社会革命党、ロシア社会民主労働党の合法化活動を促進しました。

反動とその後の展開

しかし、ニコライ2世は自身の専制権力が抑制されたことに対して屈辱感を抱いていました。皇后アレクサンドラも専制を志向し、二人は国会に対し拒否権を行使する場面が多く見受けられました。選挙法の改正により国会の権限を弱める試みが行われ、実際に自由や言論の権利は制限されていきました。

日露戦争の終結後、政府はモスクワ蜂起を武力で鎮圧し、自由主義者を含む穏健派は次第に国会選挙に向け準備を進めました。1906年の第一国会では、自由主義派が第一党に選出されるものの、ニコライ2世の拒否権行使により国会は形骸化してしまいます。

結論

十月詔書はロシアの政治史において重要な意義を持つ文書ですが、その後の反動的な動きにより、約束された自由や権利は十分に実現されることなく、ロシアは再び専制政治の暗雲に覆われることとなりました。これらの出来事は、ロシア革命へと繋がる重要な基盤を形成していくことになります。

もう一度検索