十能

十能：炭と灰を操る、日本の伝統道具

十能（じゅうのう、什能とも表記）は、古くから日本の家庭や農家で使用されてきた、炭や灰を扱うための小型の道具です。その形状は、小さなシャベルや柄杓（ひしゃく）に似ており、主に囲炉裏や石炭ストーブ、暖炉などへの燃料補給、あるいは灰の掃除、焼却炉の灰かきなどに用いられてきました。

十能は、大きく分けて「共柄（ともえ）」と「木柄（もくえ）」の2種類があります。共柄の十能は、柄の部分まで鉄で一体成形されているのに対し、木柄の十能は、柄の部分が木でできています。先端部は、多くの場合、鋳鉄製またはメッキされた薄板金製で、角ばったシャベルのような形状をしています。

近年では、100円ショップなどでも手軽に購入できるほど、身近な道具となっています。特に共柄の十能は、その安価さから、広く普及しています。

炭十能：火を運ぶための専用の道具

「炭十能」と呼ばれるものは、火のついた炭を運ぶために特化された形状をしています。柄杓のような形をしており、中には鍋のような形状のものもあります。材質も、鋳鉄製、銅製、アルミニウム製など、様々です。

一般的な十能と同様に、炭の運搬に用いられますが、重要な違いがあります。それは、底部に炎を通す隙間がない点です。そのため、炭十能に木炭を入れ、直火にかけて着火させることは困難です。

また、茶道などで使用されるような、家屋内で用いる炭十能の中には、熾き火を入れたまま畳の上に置いても安全なように、木製の台座が付いているものがあります。こうした台座付きの炭十能は、直火に掛けることができず、炭の着火には全く適していません。

十能の名称の由来

十能という名称の由来については、諸説ありますが、「10の能力（使い道）がある」ことから名付けられたという説が有力です。実際、燃料の投入や灰かき以外にも、溝の掃除など、様々な用途に使用されてきたことから、この説は納得できるものです。

現代では、その汎用性の高さから、家庭用だけでなく、キャンプなどのアウトドアシーンでも活用されるなど、幅広い用途で使用されています。手軽に手に入り、扱いやすい十能は、日本の伝統的な道具として、今後もその存在感を保ち続けることでしょう。

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