千歳丸 (砕氷船)
千歳丸（ちとせまる）
千歳丸は、日本の歴史に名を刻んだ砕氷船です。この船は1921年に建造され、当初は樺太向けの貨客船として運航されました。当時の樺太周辺では冬季に海が凍るため、砕氷機能を持つ船が必要とされていました。実際、千歳丸が建造される以前には、わずかに「弘前丸」一隻のみが日本郵船の砕氷船として存在していました。建造計画は大正9年3月に始まり、横浜船渠にて製造され、1921年の4月28日に進水し「千歳丸」と命名されました。建造にかかった費用は190万円で、砕氷能力は約60cmとなっています。
千歳丸は、横浜港から大泊港を結ぶ航路で運航を開始しました。1923年に近海郵船が設立され、千歳丸はその運航に引き継がれましたが、樺太航路での運航は続行されました。特筆すべきは、同年に発生した関東大震災の際に救助活動に参加し、在日中国人の避難船として横浜・神戸間を数航海行ったことです。このとき千歳丸は、計1285人を輸送し、さらには神戸から上海、長崎から上海間の輸送も行いました。
1934年には航路を樺太から鹿児島、長崎、大連へと移しましたが、1937年の日中戦争が始まると、千歳丸は日本陸軍に徴用され、病院船に改装されました。この改装に際して、船体は白色に塗装され、赤十字標識や緑の縁取り線が施され、戦時国際法に準じた食料や医療品を扱うための艤装が整えられました。病院船としての千歳丸は、中国から日本本土への患者輸送に従事し、1937年から1941年の間に48回の航海を行いました。
1941年9月、千歳丸は日本陸軍から徴用解除されましたが、直ちに日本海軍によって新たに徴用され、特設砲艦兼砕氷艦として改装されました。日本海軍は正規の砕氷艦が「大泊」のみであったため、千歳丸の砕氷能力は貴重な存在でした。戦争の最中、千歳丸は大湊警備府や宗谷防備隊に配属され、哨戒活動や船団護衛、氷結の状況観測に従事しました。特に、ソビエト連邦のレンドリース物資を運ぶ船の臨検も行い、軍事的な任務を果たしました。
1945年6月、千歳丸は特設運送艦に類別変更され、戦後は数少ない日本艦船の一つとして再び復員輸送に活用されることとなりました。1945年10月からは海軍の復員輸送艦として、さらには第二復員省の徴用船として小笠原諸島やパラオ、台湾からの引揚げ輸送に従事しました。引き揚げ作業が終了した後、1946年以降は函館と東京湾間での物資輸送に使用され、1949年まで引揚任務に携わりました。
その後も千歳丸は小樽・阪神航路や沖縄本島・阪神・東京湾の定期航路に就航し続け、1957年には岡田組に売却され、海難救助船としての役割を果たしました。最後には1961年に解体されることとなります。
砲艦長等
千歳丸の艦長には以下のような方々が就任しました。
特務艦長は以下の通りです。
千歳丸の歴史は、日本の戦争と平和の時代を通じて、多くの人々の命を支えたものでした。その長い航海の中で、さまざまな役割を果たしたことは、今日の日本にとっても貴重な記憶の一つとなっています。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。