千田町 (広島市)

千田町（せんだまち）：広島市中区の歴史と文化が息づく街

千田町は、広島市中区に位置し、京橋川と元安川に囲まれたデルタ地帯の最南端にあります。ここでは、「千田」を町名に含む地区の総称として解説します。

概要

かつては広島大学をはじめとする多くの教育機関が集まる文教地区として知られていましたが、近年は大学の移転により、学生街としての特色は薄れつつあります。しかし、戦前からRC造の建築物が多かったため、広島大学旧理学部1号館など、貴重な被爆遺構が今も残っています。

地理

千田町は以下の地区と隣接しています。

北: 平野町、南竹屋町、国泰寺町、大手町
東: 京橋川を挟んで皆実町、宇品
南: 京橋川と元安川が合流し、広島湾へ
西: 元安川を挟んで羽衣町、吉島

歴史

町名の由来

町名は、宇品港（現在の広島港）を築港した当時の広島県令、千田貞暁に由来するとされています。また、地区内にある「千田通り」も彼の名前にちなんで名付けられました。

千田町の誕生

千田町は、もともと藩政時代に広島湾頭に造成された埋立地でした。国泰寺村と国泰寺沖新開にまたがる位置にあり、平田屋川と西塔川の2つの運河が、地区の東西の境界となっていました。明治時代には、宇品港の築港事業に伴い、市中心部と宇品を結ぶ「千田通り」が建設され、広島電鉄宇品線が開通するなど、交通の便が向上しました。1916年、国泰寺村から分離し、「千田町」が新設されました。

文教地区・学生街としての発展

20世紀初頭から、山中高等女学校（後の広島女子高等師範学校）や広島高等師範学校をはじめ、多くの教育機関がこの地区に設立・移転しました。これにより、千田町は文教都市としての広島を象徴するようになり、学生向けの住宅、書店、飲食店などが立ち並ぶ学生街が形成されました。

工業地区としての側面

地区の南半分には、神戸製鋼広島工場や広島電灯千田町発電所が建設されました。広島電灯千田町発電所は、当時最新鋭の発電設備を備えており、広島市内の電灯普及に貢献しました。帝人広島工場も一時操業していましたが、後に閉鎖され、研究所のみが存続しました。

原爆投下による壊滅

1945年8月6日の原爆投下により、千田町地区は甚大な被害を受けました。爆心地から比較的近い位置にあったため、多くの建物が全焼・全壊し、人的被害も甚大でした。地区内の赤十字病院も大きな被害を受けましたが、被爆者の治療に尽力しました。御幸橋西詰で撮影された写真は、当時の市街地の状況を伝える貴重な記録となっています。広島貯金支局の地下室は、多くの負傷者の避難場所となり、栗原貞子の詩「生ましめんかな」の舞台となりました。

戦後の復興と広大移転

戦後、都市計画により千田通りの拡幅や主要道路の建設が進められ、街並みが整備されました。広島大学が発足し本部キャンパスが置かれたため、文教地区としての地位は維持されましたが、帝人広島の閉鎖などにより、工場地区としての性格は薄れました。1980年代以降、広島大学は東広島市への移転を進め、千田町地区は文教地区としての様相を変えつつあります。しかし、地元住民はキャンパスの存続運動を行い、一部施設が「東千田キャンパス」として残されました。

現在の千田町

近年、千田町地区では再開発が進み、新たな文化施設が建設されています。一方で、広島大学本部キャンパス跡地の整備は遅れており、町の未来像はまだ明確ではありません。しかし、地元住民・市民・広島大学生・行政が協力して「千田わっしょい祭り」を開催するなど、地域活性化の取り組みが行われています。

主な施設

広島大学東千田キャンパス
広島市立千田小学校
修道中学校・高等学校
広島県情報プラザ
広島市健康科学館
広島赤十字・原爆病院

交通

* 広島電鉄宇品線

千田町は、歴史と文化が息づく魅力的な街です。被爆遺構を巡り、平和への願いを新たにするとともに、地域住民の熱意に触れることができるでしょう。

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