千葉馨

千葉馨

千葉馨（ちば かおる、1928年3月6日 - 2008年6月21日）は、日本のホルン奏者であり、NHK交響楽団（N響）の首席ホルン奏者を長きにわたり務めました。「バーチ」という愛称で広く親しまれ、その卓越した演奏技術と音楽性で日本の音楽界に貢献しました。妻はピアニストの本荘玲子です。

生涯

大分県別府市で生まれた千葉は、7歳からヴァイオリンを始めました。中学校（旧制）時代にはラッパ鼓隊に所属し、ホルンを学び始めました。その後、東京音楽学校に進学し、在学中に日本交響楽団（現在のNHK交響楽団）の研究員となります。1949年に東京音楽学校を卒業すると同時に、N響の正団員となりました。

1956年から1958年までの2年間、ヨーロッパに留学し、デトモルト音楽大学でグスタフ・ノイデッカーに、またフィルハーモニア管弦楽団でデニス・ブレインに師事し、研鑽を積みました。この留学経験は、彼の演奏家としてのキャリアに大きな影響を与えました。

帰国後は、日本のホルン奏者の草分け的存在として、N響の首席奏者として長年にわたり活躍しました。その安定した技術と豊かな音楽表現は、多くの聴衆を魅了しました。

1983年にN響を定年退団した後も、新日本フィルハーモニー交響楽団の団友として、またN響団友オーケストラ、東京佼成ウインドオーケストラなど、さまざまなオーケストラで演奏活動を続けました。

教育者としても優れており、1993年には国立音楽大学の名誉教授に就任しました。その他、東京藝術大学、日本大学、山形大学、名古屋音楽大学、相愛大学など、数多くの教育機関で後進の指導にあたり、多くの優れたホルン奏者を育成しました。

国際ホルン協会、日本ホルン協会、東京ホルンクラブの名誉会員でもありました。

2005年に動脈瘤破裂で倒れ、意識不明の状態が続いた後、2008年6月21日に東京都小平市で永眠しました。

功績

千葉馨は、日本人として初めてモーツァルトのホルン協奏曲全曲録音を実現しました。岩城宏之の指揮のもとで録音されたこの全集は、彼の代表的な業績の一つとして高く評価されています。

また、ヘルベルト・フォン・カラヤンからベルリン・フィルハーモニー管弦楽団への移籍を打診されたものの、これを辞退したという逸話も残っています。

没後、キングレコードから2枚組CD「千葉馨、永久に」が発売され、モーツァルトのホルン協奏曲全集をはじめとする彼の主要な音源を聴くことができます。

エピソード

千葉は、東京の老舗パスタ店『パスタ 壁の穴』にキャビアを持ち込み、それを使ったメニューを考案してくれるよう依頼したそうです。その結果、誕生したのが、オリジナル・メニューである「たらこスパゲッティ」です。このエピソードからも、彼の食に対する豊かな好奇心と創造性がうかがえます。

千葉馨は、日本のホルン音楽界に多大な貢献をした偉大な音楽家として、その名と業績は永く記憶されることでしょう。

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