千駄ヶ谷トンネル

東京都渋谷区千駄ヶ谷二丁目に位置する千駄ヶ谷トンネル（せんだがやトンネル）は、都心を縦断する東京都市計画道路補助線街路第24号線（補助24号線）の一部を構成する重要な交通インフラです。このトンネルは、仙寿院交差点と神宮前交差点の間に位置し、周辺地域の円滑な交通を支えています。

このトンネルの最も特徴的な点は、古刹として知られる法雲山仙寿院東漸寺の広大な墓地の下を通過する構造であることです。全長は61メートルと比較的短く、幅員は20メートル。片側2車線、合計4車線を有しており、交通量の多いこの地域において円滑な車両の流れを確保しています。完成は1964年（昭和39年）3月で、同年に開催された東京オリンピックに向けた都市基盤整備の一環として建設されました。

この補助24号線は、第二次世界大戦終結後の1946年（昭和21年）に、戦災からの復興を目指す都市計画の一環として、戦災復興院告示第15号によりその計画が決定されました。その後、高度経済成長期を経て、1964年の東京オリンピック開催という国家的なイベントを控える中で、都市の交通網を強化するために本格的な整備が進められました。計画された道路の経路上に、紀州徳川家の菩提寺としても知られる法雲山仙寿院東漸寺の広大な墓所が存在していました。通常であれば、こうしたケースでは用地買収や移転が検討されることが多いのですが、仙寿院の墓所は歴史的な背景や重要性から、その移転は行われず、やむを得ず墓地の下にトンネルを建設して道路を通すという特殊な選択がなされました。

建設工事は、まず墓地を一時的に開削するという大がかりな方法で行われ、トンネル構造物が設置された後に、改めて墓石や遺骨の改葬が行われるという手順で進められました。周辺地域はかつて「新日暮里」とも呼ばれた歴史を持つ場所です。

トンネルの周囲には、都立明治公園や日本青年館といった文化・スポーツ施設、あるいはビクター青山スタジオのような商業施設などが点在しており、都市機能が集積するエリアとなっています。また、このトンネルを含む補助24号線の一部は、ファッションやデザイン関連の店舗が多く立ち並ぶことで知られる「キラー通り」（外苑西通り）とも接続しており、交通の要衝としての役割も担っています。現在も、多くの車両がこのトンネルを通過し、渋谷区と新宿区、港区方面を結ぶ重要なアクセスルートとして機能しています。

千駄ヶ谷トンネルは、短いながらも、戦災復興から高度成長、そしてオリンピック開催という日本の近代史の節目における都市計画のあり方や、歴史ある寺院との共存を図るための工夫を示す、歴史的・構造的に興味深い建造物と言えるでしょう。

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