千鳥ケ淵戦没者墓苑

千鳥ヶ淵戦没者墓苑について

千鳥ヶ淵戦没者墓苑は、東京都千代田区に位置する、日本の戦没者を慰霊するための国立施設です。この墓苑は、日中戦争や太平洋戦争で亡くなった軍人、軍属、民間人のうち、身元が判明しなかったり、遺族に引き渡すことができなかった遺骨を安置しています。環境省が管理する国民公園の一つであり、静かで厳粛な空間として、多くの人々に慰霊の場を提供しています。

歴史的背景

1950年代、戦没者の遺骨が日本に送還されるようになり、その数は増加の一途を辿りました。しかし、身元不明の遺骨が多く、それらを安置する場所が必要となりました。当時、国家的な戦没者追悼施設としては靖國神社がありましたが、宗教法人として独立しており、国家が直接管理する施設が求められました。そこで、政府は「無名戦没者の墓」を建設する方針を決定し、1959年に千鳥ヶ淵戦没者墓苑が竣工しました。

施設の概要

墓苑内には、六角堂という特徴的な納骨堂があり、その中央には昭和天皇から下賜された骨壺を納めた陶棺が安置されています。六角堂の地下には、戦没者の遺骨を納めた納骨室があり、現在までに約37万柱の遺骨が安置されています。苑内は、田村剛氏が設計した庭園や、約4000本の樹木が植えられており、静かで厳粛な雰囲気を醸し出しています。また、苑内には「昭和天皇御製の碑」と「今上陛下御製の碑」が建立されており、天皇陛下の御製が刻まれています。

施設の維持・管理

千鳥ヶ淵戦没者墓苑は、環境省が維持管理を行っており、その下部組織である千鳥ヶ淵戦没者墓苑管理事務所が日々の運営を担っています。また、公益財団法人千鳥ケ淵戦没者墓苑奉仕会が清掃などの維持管理に協力しており、墓苑の美化に貢献しています。

施設の詳細

敷地面積: 1万6063平方メートル
開苑時間: 4月から9月は午前9時から午後5時まで、10月から3月は午前9時から午後4時まで。
六角堂: 戦没者の遺骨を安置する納骨堂。
陶棺: 昭和天皇から下賜された骨壺を納めた、巨大な陶器製の棺。
納骨室: 六角堂の地下にあり、戦没者の遺骨を安置。
標石: 墓苑の入口に設置された、「千鳥ヶ淵戦没者墓苑」と記された標石。
碑: 昭和天皇と今上天皇（上皇）の御製が刻まれた碑。

行事

千鳥ヶ淵戦没者墓苑では、毎年、戦没者を慰霊するための様々な行事が開催されます。

拝礼式: 厚生労働省が主催し、毎年5月に開催される。皇族や内閣総理大臣などが参列し、戦没者の遺骨を納める。
秋季慰霊祭: 千鳥ケ淵戦没者墓苑奉仕会が主催し、秋に開催される。皇族や国務大臣が参列し、献花などが行われる。
その他: 各種団体の慰霊行事が一年を通して行われる。

名称について

墓苑の名称は、「千鳥ケ淵戦没者墓苑」と表記されることが一般的ですが、堀の名称である「千鳥ヶ淵」は「ヶ」が小書きで表記されることが多いです。環境省の公式文書では大きい「ケ」が使用されていますが、千鳥ケ淵戦没者墓苑奉仕会の公式ウェブサイトでは、小書きの「ヶ」が使用されることもあります。

沿革

1952年：全日本無名戦没者合葬墓建設会が発足。
1953年：厚生省が戦没者墓苑の設置を検討。
1953年：閣議決定により、国が「無名戦没者の墓」を建設することが決定。
1959年：千鳥ヶ淵戦没者墓苑が竣工。
2013年：アメリカの閣僚が初めて献花。

アクセス

東京メトロ東西線、半蔵門線、都営新宿線：九段下駅「2番出口」から徒歩12分。
東京メトロ半蔵門線：半蔵門駅「5番出口」から徒歩10分。
駐車場あり（一方通行に注意）。

その他

墓苑内は、静穏な雰囲気が保たれており、慰霊に適した環境です。六角堂の献花台では菊を購入でき、無料休憩所や自動販売機も設置されています。また、持参した物を食べることができる場所もあります。

関連施設

千鳥ヶ淵緑道：千鳥ヶ淵沿いの遊歩道。
靖国神社
東京都慰霊堂
東京都戦没者霊苑

千鳥ヶ淵戦没者墓苑は、戦没者を慰霊するだけでなく、平和を祈る場所としても重要な役割を果たしています。その静寂な空間は、訪れる人々に深い思索の機会を与えてくれるでしょう。

もう一度検索