午後のおしゃべり

『午後のおしゃべり』

『午後のおしゃべり』（ごごのおしゃべり）は、1959年10月6日から1961年3月28日まで、日本の公共放送であるNHK総合テレビジョンで放送されていた、ユニークなバラエティ番組です。この番組は、後のNHKを代表する長寿番組『夢であいましょう』の前身にあたる番組として知られています。デザイナーとして活躍されていた中嶋弘子さんが司会の大役を務め、その個性的な魅力で番組を牽引しました。

番組内容と変遷

番組のスタート当初は、司会の中嶋弘子さんと毎回迎えるゲストの方々との軽妙なトークを中心に構成されていました。しかし、番組が進むにつれてその内容は徐々に多様化していきました。単なる対話に留まらず、音楽パフォーマンスやコントなどのエンターテインメント要素が積極的に取り入れられるようになります。このような内容の拡充こそが、後に多くの視聴者に愛されることになる『夢であいましょう』の原型、すなわち基本的なスタイルや雰囲気を形成していく上で極めて重要な役割を果たしました。まさに、この『午後のおしゃべり』の中で、日本におけるテレビバラエティ番組の新しい形が模索され、確立されていったと言えるでしょう。

司会者・中嶋弘子の個性

司会を務めた中嶋弘子さんは、本業がデザイナーという異色の経歴を持つ人物でした。テレビ司会者としては珍しい存在でしたが、彼女ならではの独特の感性や語り口が番組に彩りを添えました。特に印象的だったのは、彼女が番組中やゲストを迎える際に見せた、体を斜めに傾けるような独特のお辞儀のスタイルです。このお辞儀は、彼女自身のトレードマークともなり、この『午後のおしゃべり』の放送が始まった段階ですでに採用されていました。

映像資料の希少性

『午後のおしゃべり』は、当時の多くのテレビ番組と同様に生放送で行われていました。生放送は、その場の臨場感やライブ感を視聴者に届けることができるという利点がある一方で、映像として記録に残すことが技術的にも費用的にも難しかったという制約がありました。そのため、残念ながら番組の映像はほとんど現存していません。

現在、その貴重な存在が確認されている映像資料は、わずか2本のみです。1本は、番組の第4回放送をキネコ（キネスコープ録画）という手法で録画したものです。もう1本は、フランスで開催された国際テレビ祭「ゴールデンローズ国際テレビ祭」に出品するために、特別にフィルムで撮影された回のもので、これが現存する唯一のフィルム記録とされています。この希少な2本の映像は、NHKアーカイブスの公開ライブラリーにて視聴することが可能です。これにより、当時の番組の雰囲気や、中嶋弘子さんの司会ぶりなどを、現代の私たちが垣間見ることができます。

主な制作スタッフ

番組の成功を支えたスタッフ陣も豪華な顔ぶれでした。

作（脚本）: 永六輔、キノトール
音楽: 宮城秀雄、中村八大
タイトル: 吉村祥
演出: 末盛憲彦

特に、作家の永六輔さんや音楽の中村八大さんは、後の『夢であいましょう』でも中心的な役割を果たし、日本のテレビ史に名を刻むことになります。彼らのクリエイティビティが、『午後のおしゃべり』という番組を通して発揮され、それが次の時代の番組へと繋がっていったと言えるでしょう。

このように、『午後のおしゃべり』は短い放送期間ながらも、その革新的な内容は後の人気番組の礎を築き、テレビバラエティの歴史において重要な位置を占める番組だったのです。

もう一度検索