半済

半済（はんぜい）とは

半済とは、室町幕府が荘園や公領から年貢の半分を徴収する権利を守護に与える制度を指します。この制度の根拠となる法令は「半済令」または「半済法」と呼ばれます。元々、半済は「年貢の半分を納付する」という意味を持ち、これは百姓に対して年貢の負担を軽減することを意図したものでした。しかし、南北朝時代に入ると、守護は軍事の資金や物資を現地で調達する必要から、荘園や公領の年貢を半分徴収し始め、この形式が「半済」として知られるようになりました。1352年には最初の半済令が幕府から発布され、これが守護による地方経済への侵入を加速させました。

沿革

現在確認できる半済令の始まりは、1352年7月に室町幕府から発表されたものでした。この時、全国で動乱が続いており、特に近江国、美濃国、尾張国などの激戦地から年貢の半分を守護が徴収することが認められ、これらの場所は「兵粮料所」と定義されました。それにより、周辺の国の守護たちもこの制度の適用を望み、翌月には河内国、和泉国、伊賀国、伊勢国、志摩国にも拡大されました。

1355年、幕府はうまく半済を制限し、戦乱が収束した地域では年貢の徴収を停止することを決定しました。しかし、守護たちはこの制度を既得権として扱い、荘園や公領への不合理な干渉を続けました。このような状況の中で、幕府は貴族や寺社など他の権力層を保護するために、武士による半済の行使を抑制する努力をしました。

そして1368年には、応安の半済令が発布され、これにより皇族や寺社、摂関領を除いて、すべての荘園年貢は本所側と守護側の武士で均衡して配分されることが定められました。この法令は、守護の権利を拡大し、各地で荘園や公領の分割を促進しました。さらに、15世紀後半には応仁の乱や近江出兵に関連して再度半済令が施行されることが記録されています。

半済の影響

半済令の施行がもたらした影響の一つは、荘園が徐々に解体へと向かうきっかけとなったことです。応安の半済令によって、守護は荘園や公領の実質的な権力を掌握することとなり、荘園の解体は進展していくことになりました。鎌倉時代の守護が軍事的な警察権しか持たなかったのに対し、室町時代の守護は半済で得た権利を元に、さらなる権限の拡充を図っていきました。また、荘園領主や国衙の権能も併せて吸収し、領国内の武士たち（国人）の統治・支配を深化させました。こうして、守護は半済を契機に、自身の支配権を広げ、これを「守護領国制」と呼びます。このように、室町時代の守護は単なる武士から、領国を制御する支配者へと姿を変えていったのです。

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