伊賀国

伊賀国：忍者の里、そして歴史の舞台

伊賀国は、古代から近世にかけて存在した日本の令制国の一つです。東海道に属し、三重県中部に位置していました。豊かな自然と複雑な地形から、独自の文化と歴史を育んできた地域として知られています。特に、数々の忍者を輩出した「忍者の里」としてのイメージが強いですが、その歴史ははるかに古く、多様な側面を持っています。

律令制以前から古代へ

律令制以前は、伊賀国造の支配下にありました。その後、飛鳥時代に成立した伊勢国の一部として編入されましたが、680年（天武天皇9年）、伊勢国から分割独立し、伊賀国として確立されました。当初は2郡でしたが、その後、阿拝郡、山田郡、伊賀郡、名張郡の4郡に分割されました。国府は阿拝郡に置かれ、発掘調査によって当時の政庁跡である「伊賀国庁跡」が確認され、国の史跡に指定されています。国分寺と国分尼寺の跡も残っており、伊賀国の仏教文化の一端を垣間見ることができます。

中世の群雄割拠と忍者の台頭

室町時代には、仁木氏が伊賀守護職を務めましたが、その支配力は弱く、多くの地侍が自治的な勢力を形成していました。この複雑な政治情勢の中で、伊賀は独自の軍事力を持つ集団を育みます。600を超える土塁付の屋敷が築かれたことが、後の忍者の発生につながったとされています。織田氏の支配下に入るまでの間、伊賀は群雄割拠の状態が続き、それぞれの勢力が争いを繰り広げました。この時代、織田氏による支配強化を図る天正伊賀の乱が勃発、激戦が繰り広げられました。乱後、伊賀3郡は織田信雄が、残りの1郡は織田信包が支配することとなりました。徳川家康による「神君伊賀越え」もこの時代の出来事です。

近世と近代

江戸時代には、伊賀国は藤堂家の領国の一部となり、伊勢津藩の支配下に置かれました。「旧高旧領取調帳」によると、明治維新の直前には、伊賀国の全域が伊勢津藩領でした。廃藩置県を経て、三重県の一部となりました。

伊賀国の文化と信仰

伊賀国には、多くの神社仏閣が存在し、独自の信仰文化が形成されてきました。『延喜式神名帳』には、大社1社、小社24社の計25社が記載されており、その中には、現在も信仰を集める敢國神社などが含まれています。一宮、二宮、三宮といった独自の神社の序列も存在していました。また、安国寺や利生塔など、歴史的価値の高い寺院も存在していました。

伊賀国ゆかりの人物

伊賀国には、多くの歴史上の人物が関係しています。国司として数多くの者が赴任し、また、守護職には仁木氏をはじめとする有力武将が就きました。戦国時代には、伊賀国に有力な戦国大名は出現しませんでしたが、各地に勢力を持ち、独自の文化を形成した土豪や忍者たちが活躍しました。さらに、武家官位としての「伊賀守」を名乗った者も多く、彼らの多くは各地の大名や藩主として活躍していました。

伊賀国の地理

伊賀国は山がちで、盆地や谷が多く複雑な地形をしています。柘植川、服部川、木津川、名張川といった河川が流れ、上野盆地などといった盆地も存在していました。この複雑な地形は、中世における群雄割拠の状況や、忍者の活動にも影響を与えたと考えられています。

まとめ

伊賀国は、複雑な歴史と独自の文化を持つ、魅力的な地域でした。忍者の里としてのイメージだけでなく、律令制以前からの歴史、中世の群雄割拠、そして近世以降の変遷まで、多角的に捉えることで、その奥深い魅力を理解することができます。数多くの史跡や、ゆかりの人物を通して、伊賀国の歴史を紐解き、その魅力を再発見してみましょう。

もう一度検索