半目勝負

半目勝負とは

囲碁における半目勝負（はんもくしょうぶ）とは、対局の結果が「黒の半目勝ち」または「白の半目勝ち」となる、非常に僅差の勝負のことです。囲碁の勝敗は、最終的に盤上の地（陣地）の広さを比較して決定されますが、半目勝負では、その差がわずか0.5目という、非常に接戦となるのが特徴です。

囲碁の基本ルールとコミ

囲碁は、黒と白の石を交互に盤上に置いていき、最終的に自分の石で囲んだ領域（地）の広さを競うゲームです。ただし、単純に地を数えるだけでは、先手である黒が有利になるため、ルール上、白にはコミというハンデが与えられます。現在の日本ルールでは、コミは6目半（6.5目）と定められており、これは白の最終的な地の広さに加算されます。これにより、黒は盤面で7目以上のリードを築かなければ勝利できず、逆に白は黒のリードを6目以内に抑えれば勝利となります。

半目勝負の仕組み

半目勝負は、終盤において、黒が盤面で7目勝ちとなるか、白が盤面で6目勝ちとなるかという、極めて僅差の状況で発生します。この際、最後にダメ（自陣を埋める着手）を詰める側が、原則として負けるという特徴があります。

なぜ最後にダメを詰めた方が負けるのか

この現象は、囲碁盤の交点の数が奇数であること（19路盤の場合、19×19=361個）と、黒と白が交互に着手するというルールに起因します。

着手数の偶奇
黒が着手を完了した時点では、着手された石の総数は奇数、白が着手を完了した時点では、着手された石の総数は偶数になります。
整地後の盤面
ダメを全て詰めて整地が完了した盤面は、「黒または白の生きた石＋アゲハマ（取った石）」か、黒または白の地のいずれかで埋まります。
交点数と着手数の関係
盤面の交点数（361個）から着手された石の総数を引いた数が、黒地と白地の合計となります。
最後のダメの重要性
最後に黒がダメを詰めた場合、着手数は奇数となり、黒地と白地の合計は偶数になります。この時、コミを出す前の地の差は、0、2、4、6、8…となり、半目勝負では6目差となり、白の半目勝ちとなります。
逆に、最後に白がダメを詰めた場合、着手数は偶数となり、黒地と白地の合計は奇数になります。この時、コミを出す前の地の差は、1、3、5、7、9…となり、半目勝負では7目差となり、黒の半目勝ちとなります。

ダメ詰めと勝敗の関係の例外

ただし、上記の原則は、以下の例外的なケースでは当てはまらないことがあります。

パス

囲碁では、ルール上パス（着手放棄）が認められています。対局中にパスが発生すると、着手数の偶奇が逆転し、最後にダメを詰めた方が勝つという現象が起こります。

セキ

セキ（両方の石が生きている状態）の形によって、ダメの数が奇数個になる場合があります。この場合も、着手数の偶奇が逆転し、最後にダメを詰めた方が勝つという現象が起こります。

例外の例外

さらに、以下の条件が重なると、例外の法則も当てはまらなくなることがあります。

終局までに偶数回のパスが発生した場合
ダメが奇数個のセキが偶数個発生した場合
「奇数回のパス」と「ダメが奇数個のセキの奇数個の発生」が両方発生した場合

これらのケースは非常に稀であり、実戦で起こることはほとんどありません。

コミの違いによる変化

上記の解説は、コミが6目半の場合のものです。かつてコミが5目半だった時代には、奇数と偶数の立場が逆転し、「最後にダメを詰めた方が勝ち」となっていました。コミの変遷は、囲碁のルールが変化してきた歴史を物語っています。

プロの世界での半目勝負

プロの対局においても、半目勝負は珍しくありません。複雑な局面では、プロ棋士でも読み切ることができず、整地後に半目差が判明することもあります。日本棋院の調査によると、全対局のうち、約4%が半目勝負となっています。

半目勝負が多い棋士

日本棋院所属の棋士を対象とした調査では、半目勝負の発生率が高い棋士として、依田紀基、張栩、小林光一、山城宏、小林覚などが挙げられています。

まとめ

半目勝負は、囲碁の奥深さを象徴する要素の一つです。わずか半目の差が勝敗を分けるという緊張感は、囲碁の醍醐味とも言えるでしょう。半目勝負の仕組みを理解することで、より囲碁を楽しむことができるはずです。

もう一度検索