半藤末利子

半藤 末利子（はんどう まりこ）

日本の随筆家。1935年（昭和10年）6月4日、東京府に生まれる。旧姓は松岡。

父は小説家の松岡譲、母は文豪夏目漱石の長女である筆子。末利子氏は、漱石と鏡子夫妻の孫にあたり、父方の祖父は英文学者の松岡康。文壇や学術界に連なる家庭環境で育った。

経歴

太平洋戦争中は、父の出身地である新潟県長岡市へ疎開生活を送る。戦後、新潟県立長岡高等学校を卒業。その後、早稲田大学文学部芸術科（現在の文学部）と上智大学比較文化科にて学びを深めた。

活動と著作

随筆家として、自身の家族や生い立ちに関する著作を多く発表している。特に、祖父である夏目漱石や、漱石家、松岡家の日常、さらには自身の結婚生活や老後に焦点を当てた作品が知られている。ユーモアを交えつつ、昭和の家族の姿や文化、そして著名な文人たちの素顔を描き出しており、多くの読者から親しまれている。

2017年9月24日には、夏目漱石生誕150年を記念して東京都新宿区に開館した新宿区立漱石山房記念館の名誉館長に就任した。これは、漱石家の血を引く人物として、漱石の功績や関連資料を伝える活動への貢献が期待されてのものといえる。

主な著書としては、『夏目家の糠みそ』、『漱石夫人は占い好き』、『夏目家の福猫』、『漱石の長襦袢』、『老後に快走！ ズッコケ夫婦の奮闘努力』、『硝子戸のうちそと』などがある。これらの作品を通じて、一般にはうかがい知ることのできない文豪ゆかりの家庭の様子や、そこに暮らした人々の息遣いを伝えている。

親族

夫は歴史小説やノンフィクションで知られる作家・随筆家の半藤一利（はんどう かずとし）氏。姉の松岡陽子マックレイン氏は比較文学の研究者で、オレゴン大学の名誉教授を務めている。

また、著名な親族には、祖父の夏目漱石（小説家）、祖母の夏目鏡子（随筆家）、父の松岡譲（小説家）、叔父の夏目純一（バイオリン奏者）や夏目伸六（随筆家）などがいる。

さらに、漫画家・評論家の夏目房之介氏は従弟にあたり、実業家の夏目一人氏、音楽家のEmi氏はそれぞれ従甥、従姪にあたるなど、多岐にわたる分野で活躍する親族を持つ。

主な著書一覧

『夏目家の糠みそ』 PHP研究所, 2000年
『夏目家の糠みそ』 PHP研究所〈PHP文庫〉, 2000年
『漱石夫人は占い好き』 PHP研究所, 2004年
『夏目家の福猫』 新潮社〈新潮文庫〉, 2008年
『漱石の長襦袢』 文藝春秋, 2009年
『漱石の長襦袢』 文藝春秋〈文春文庫〉, 2009年
『老後に快走！ ズッコケ夫婦の奮闘努力』 PHP研究所〈PHP文庫〉, 2015年
『硝子戸のうちそと』 講談社, 2021年

これらの著作は、日本の近代文学史における重要な一族である夏目家や、それに連なる松岡家の人々の息遣いを現代に伝える貴重な資料ともなっている。随筆家としての半藤末利子氏の活動は、文学史と個人の生活史が交錯する興味深い一端を示している。

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