卑弥呼 (映画)

『卑弥呼』は、1974年に公開された篠田正浩監督による日本映画であり、第27回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されました。この作品は、古代日本を舞台に、日の神の声を聞くことができる特別な存在であるヒミコ（岩下志麻）を中心に物語が展開します。

物語は、ヒミコの父であり天津神の国のオオキミが、彼女の能力を疑い始めたことから動き始めます。さらに、長旅から帰還したヒミコの異母弟であるタケヒコ（草刈正雄）への、ヒミコ自身の秘めたる思慕も、オオキミには受け入れがたいものでした。しかし、オオキミはヒミコの従僕であるナシメ（三國連太郎）によって命を奪われます。ヒミコは、タケヒコがアダヒメ（横山リエ）を通じて国津神の国と密通し、反乱を企てていると疑い、嫉妬心から彼を捕らえ、追放します。それでもヒミコは、タケヒコへの想いを神の声として告白しますが、オオキミの後継者となったミマキ（河原崎長一郎）は、それを神託と信じず、ヒミコは幽閉されてしまいます。一方、追放されたタケヒコは、瀕死の状態でありながらも国津神の国に戦を仕掛けますが、戦の最中にアダヒメと共に矢に射抜かれ、命を落とします。そして、ヒミコ自身もまた、悲劇的な運命をたどることになります。

この映画には、岩下志麻、草刈正雄、横山リエ、三國連太郎といった豪華キャストが出演しています。監督は篠田正浩、脚本は富岡多恵子と篠田正浩が共同で担当し、撮影は鈴木達夫、美術は粟津潔、音楽は武満徹が手がけるなど、一流のスタッフが集結しました。

映画『卑弥呼』は、その重厚なテーマと映像美、そして出演者の迫真の演技によって、観る者を圧倒します。古代日本の神秘的な雰囲気を醸し出しつつ、人間の欲望や葛藤、悲恋を描き出しています。特に、岩下志麻が演じるヒミコの存在感は圧倒的で、彼女の複雑な内面を深く表現しています。また、タケヒコを演じる草刈正雄の力強い演技も、物語に深みを与えています。

『卑弥呼』は、単なる歴史劇にとどまらず、人間の普遍的な感情や運命を深く掘り下げた作品として、今もなお多くの観客を魅了し続けています。1974年の毎日映画コンクールでは、西崎英雄が録音賞を受賞しました。この作品は、日本映画史に残る傑作として、その名を刻んでいます。

この映画は、allcinema、KINENOTE、日本映画データベース、IMDb、国立映画アーカイブなどのウェブサイトで詳細な情報が公開されており、視聴者はそれらを通じて、より深く作品を理解することができます。また、文化庁日本映画情報システムのアーカイブにも、過去の記録が残されています。

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