南アフリカ航空295便墜落事故

南アフリカ航空295便墜落事故

1987年11月28日、台湾を出発した南アフリカ航空295便ボーイング747-200B型機（ZS-SAS、愛称：ヘルダバーグ）は、モーリシャス近海のインド洋上空で墜落しました。乗客乗員159名全員が犠牲となったこの事故は、その原因究明の困難さ、そして数々の謎を残したことで知られています。

事故の概要

295便は、台湾の中正国際空港（現・台湾桃園国際空港）からモーリシャスを経由し、南アフリカのヨハネスブルグに向かう定期便でした。モーリシャス上空で貨物室から火災が発生し、機体は制御不能に陥り墜落。墜落地点はモーリシャスの北東約250キロメートル沖合、水深約4000～5000メートルの海底でした。

乗組員と乗客

ベテランパイロットを含む経験豊富な乗組員と、多くの日本人乗客を含む140名の乗客が搭乗していました。日本人乗客には、日本水産の漁船員38名も含まれており、日本国内に大きな衝撃を与えました。

事故調査

墜落地点の深さ、機体の損傷の激しさから、調査は困難を極めました。米国のサルベージ会社による大規模な捜索活動の結果、コックピットボイスレコーダー（CVR）が回収されましたが、フライトデータレコーダーは発見されませんでした。

CVRのデータから、火災発生からわずか1分足らずで機体の電気系統が故障し、操縦不能に陥ったことが判明しました。しかし、火災の原因については特定できず、公式調査は原因不明のまま終了しました。

さまざまな憶測と陰謀論

事故原因をめぐっては、テロ説や、貨物に含まれていた物質の発火説など、さまざまな憶測や陰謀論が飛び交いました。中には、当時武器禁輸下にあった南アフリカ政府による武器密輸に関わる説まで存在します。しかし、これらの憶測を裏付ける決定的な証拠は見つかりませんでした。

公式調査委員会は、火災の直接原因を特定できませんでしたが、クラスB貨物室の火災検知・制御システムの不備が事故に大きく関わったと結論付けました。この事故は、航空業界における貨物室の安全基準の見直しを促す契機となりました。

ボーイング747-200Bコンビと貨物室

295便に使用されていたボーイング747-200Bコンビは、客室と貨物室を備えた特殊な機体でした。事故調査では、貨物室の設計上の問題や、貨物に含まれていた物質の特性が火災拡大に影響を与えた可能性も指摘されています。

日本との関わり

多くの日本人が犠牲になったこの事故は、日本国内にも大きな衝撃を与えました。遺族への支援や、事故の慰霊碑建立など、日本政府や関係団体によるさまざまな取り組みが行われています。

結論

南アフリカ航空295便墜落事故は、多くの犠牲者を出した未解明の航空事故として、現在もなお人々の記憶に残っています。事故調査の結果、貨物室の安全基準の不備が指摘された一方で、火災の直接原因は特定されませんでした。この事故は、航空安全の重要性を改めて認識させ、航空業界における安全基準の向上に貢献しました。しかし、残された謎や陰謀論は、この悲劇の重さをさらに際立たせています。

参考文献

* デビッド・ゲロー 著、清水保俊 訳『航空事故』（増改訂）イカロス出版、1997年。

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