南丹隕石

南丹隕石：歴史、発見、そしてその価値

1516年、中国南丹県に落下した南丹隕石は、歴史と謎に満ちた鉄隕石として知られています。明時代の古文書には、その落下の様子が克明に記録されており、北西の空から長く輝く星が落下し、地響きと激しい閃光を伴ったと伝えられています。当時、この地域にはトン族とヤオ族が暮らしており、人々は未曾有の天体現象を目の当たりにしたことでしょう。

隕石は、大気圏で爆発的に破裂し、広西チワン族自治区南丹県周辺、およそ28キロメートル×8キロメートルに渡って無数の破片が散らばりました。落下地点は北緯25度6分、東経107度42分と特定されています。

これらの破片は、約400年間も地中に埋もれたままの状態でした。状況が一変したのは1950年代後半。中国における大躍進政策下、鉄鋼生産の増強が叫ばれ、各地で金属のスクラップ収集が盛んに行われたのです。南丹隕石の破片も、この際に多くが発見されました。しかし、鉄隕石特有の高ニッケル含有量のため、製鉄には不向きであることが判明。多くの破片は、液体窒素で冷却処理された後、爆発物を使って砕かれ、その過程で多くの破片が損傷を受けてしまいました。そのため、現在、状態の良い大きな破片は少ないのが現状です。

発見当時、南丹隕石はアジア最大級の隕石雨として注目を集めました。回収された総重量はおよそ9,500キログラムにも及び、最大の破片は2,000キログラムを超えると言われています。隕石はIIICDグループのオクタヘドライトに分類され、その化学組成は鉄92.35%、ニッケル6.96%、その他に炭素、銅、コバルトなどを含んでいます。断面には、ギベオン隕石などに見られるウィドマンシュテッテン構造と呼ばれる美しい模様が観察できます。

日本においても、1990年代に行われた調査で発見された南丹隕石の破片が、国立科学博物館で一般公開されています。これは、この貴重な隕石を間近で観察できる貴重な機会となっています。

1990年代後半から2000年代初頭にかけて、隕石市場では価格の高騰が観測されました。南丹隕石もその影響を受け、特に状態の良い破片は高値で取引されるようになりました。しかし、前述のように多くの破片が加工されたり損傷を受けているため、状態の良い標本は希少価値が高く、研究目的ですら入手が困難な状況が続いています。錆びのひどい、質の悪い破片も多く出回ったため、コレクターにとっては注意が必要な隕石と言えます。

南丹隕石は、単なる鉄の塊ではなく、500年以上の歴史を持ち、人類と宇宙の関わりを物語る貴重な存在です。その科学的価値に加え、歴史的・文化的側面からも、南丹隕石は今後も研究対象として、また、宇宙へのロマンを想起させる存在として、人々を魅了し続けることでしょう。

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