南十字星 (映画)

映画『南十字星』の概要

『南十字星』は、1982年に公開された日本とオーストラリアによる初の映画合作であり、太平洋戦争中のシンガポールを舞台にした物語です。この作品は、東宝の設立50周年を祝して制作され、海外では「The Highest Honor」という題名で公開されましたが、オーストラリアでは劇場公開されず、テレビでミニシリーズとして放映されました。日本では、黒木瞳が宝塚歌劇団在団中に初めて参加した映画でもあるため、注目されています。

作品のあらすじ

物語の舞台は1941年、日本軍に占領されたシンガポールです。日本軍は港に停泊中の艦艇に爆破テロが起こり、憲兵隊は現地の中国系住民を捕まえて拷問しました。しかし、実際の犯人は英豪連合軍の特殊部隊「Zフォース」によるものです。この部隊は翌年にも再度の攻撃を試みますが、日本軍の反撃を受け、ペイジ大尉などのメンバーが捕虜となります。

通訳官である田宮は、日本軍の残虐行為に心を痛めながら、憲兵隊の拷問を止めようと奮闘し、結局ペイジと彼の間に友情が芽生えます。ペイジが自白する中、軍事裁判が始まり、立花検察官はペイジたちを英雄的行為として称賛し、死刑を求刑します。田宮はペイジの希望だった斬首刑を避けようと願い出ますが、彼の願いは聞き入れられません。最終的に、田宮はペイジの手によって彼の処刑が実行されます。作品のラストでは、田宮が友人たちを冥福を祈る姿が描かれています。

作品の歴史

当時の制作背景には、製作会社の持丸寛二と新日本映画の関係があり、持丸は『あゝ野麦峠』の続編制作を中止し、本作を作ることを決定しました。さらに、映画が撮影された場所は、オーストラリア、中東など多岐にわたり、撮影は1982年の春までに行われました。制作費は約10億円という巨額で、映像のクオリティにもこだわった様子が伺えます。

音楽と主題歌

映画の主題歌「南十字星」は西城秀樹が歌い、20万枚以上の売上を記録しました。しかし、映画自体の評価は芳しくなく、公開後にお蔵入りとなり、2023年現在でもDVD化されていないという残念な実情もあります。監督の丸山誠治も本作を最後に映画界を引退しました。

キャストとスタッフ

キャストには、田宮役の中村敦夫、立花少佐役の北大路欣也をはじめ、多くの実力派俳優が名を連ねています。また、オーストラリア側ではペイジ役にジョン・ハワードが起用されています。

スタッフ面では、監督は丸山誠治とピーター・マックスウェルが務め、脚本は須崎勝弥とリー・ロビンソンが担当しました。撮影や音楽、録音なども多くの才能あるクリエイターによって支えられました。

『南十字星』は、戦争の悲惨さとそれを超えた人間同士の絆を描いた作品であり、その深いストーリーとメッセージは今でも多くの人々の心に残ることでしょう。

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