南喜一

南 喜一について

南 喜一（みなみ きいち、1893年2月19日 - 1970年1月30日）は、昭和期の日本における実業家として知られ、日本製紙の前身である国策パルプの会長を務めました。彼は「ガマ将軍」という愛称で著名であり、その名前は友人の尾崎士郎によって名付けられました。南は人生劇場の登場人物のモデルの一人としても知られています。

生い立ちと初期の経歴

彼は石川県の三馬村、現在の金沢市で生まれました。若い頃は様々な職業を経験しながら、17歳で専検に合格し、上京しました。人力車を引いたり、演歌師として活動しながら早稲田大学の理工科に入学しますが、後に中退。その後、グリセリン工場を経営し、ビジネスに足を踏み入れました。

1923年には、関東大震災の混乱を受け、実弟の死をきっかけに日本共産党に入党し、労働争議の指導に関与しました。しかし、1928年の三・一五事件で逮捕され、獄中で思想を転向。その後は私娼解放運動や、古紙再生会社「大日本再生製紙」を設立したり、国策パルプとの合併を果たします。

実業家としての活動

戦後、南は国策パルプの副社長、副会長を経て1962年に会長に就任。さらにヤクルト本社の会長や、日本クロレラ研究所の会長も務めました。ヤクルト本社のCEO時代、彼はプロ野球チーム・サンケイアトムズを買収し、この事業において「水野の窮地を盟友の南が救った」といわれるほどの功績を残しました。彼の影響力は、経済の分野にとどまらず、地域社会にも広がったのです。

文学的活動と『ガマの聖談』

南は性豪としても有名であり、75歳のときに8人の愛人を持っていたとされています。彼は猥談の名手でもあり、1968年に著書『ガマの聖談　人生に関する珍考漫考』を刊行しました。この本は、月刊誌『宝石』に連載された内容をまとめたもので、後に50万部を超えるベストセラーとなりました。南はこの本の中で、年齢を重ねても性に対する欲望が衰えず、逆に充実していると語りました。

彼の作品は主に性的な内容が多いものの、最後には「健康でいられるのはヤクルトのおかげだ」と締めくくっています。尚、このエッセイ集は著作権の面ではゴーストライターの末永勝介が関与していたとの説も残されています。

社会運動とその後

南は戦前から東京・玉の井において私娼解放運動に従事し、1969年には『ガマの闘争　玉の井私娼解放の記録』を発表し、娼婦たちの持っていた悲惨な状況を訴えかけました。南は約220人の娼婦を救済しようと努力しましたが、戻ることができたのは2人だけという現実も語られています。彼の生涯は、ビジネスや文学、そして社会運動にわたる多様な側面に溢れています。彼の活動は、その後の社会問題にも多くの影響を及ぼしたと言えるでしょう。

南喜一は1970年に亡くなりましたが、その作品や活動は今なお多くの人々に語り継がれています。彼の立ち位置は、ただの実業家を超え、文学や社会においても重要な人物として認識されています。

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