三・一五事件

三・一五事件

三・一五事件（さん・いちごじけん）は、1928年3月15日に発生した事件で、日本共産党などの共産主義者に対する大規模な検挙作戦が行われました。この日に、数千名の活動員が検束され、そのうち約300名が逮捕されました。事件に関連して治安維持法が適用され、30人が直ちに市ヶ谷刑務所に収監される結果となったのです。

背景

事件の背景には、当時の日本政府が国際共産主義運動、とりわけ私有財産制度を否定し、君主制にも反対する動きに警戒していたことがあります。1917年のロシア革命は、世界各地での革命運動に影響を与えました。日本はシベリア出兵を通じて、列強としての立場から革命を阻止しようとしましたが、実際には革命の進展は止まりませんでした。これにより、他国同様に日本もソビエト連邦を受け入れるようになりました。

1924年に成立した第一次加藤高明内閣は、「憲政常道論」に基づき政党内閣時代の幕を開けます。内閣は普通選挙を導入し、日ソ国交を樹立しました。しかし、同時期に設立された治安維持法（1925年）は、共産主義者を逮捕し、投獄する権限を与えるものでした。この法律により、政府は大きな権力を持つことになりました。

事件の経緯

三・一五事件は、予審判事の指導のもと、全国一斉に行われました。日本共産党をはじめ、労働農民党や日本労働組合評議会、さらには多くの関係者が捜査の対象となりました。結果として、488人が起訴されましたが、多くの幹部は逮捕を逃れました。事件直後、報道規制が敷かれたため、詳細が一般には知られませんでしたが、翌月には部分的な情報公開が行われ、司法省から事件の概要が発表されました。

当時、逮捕された共産党員の一人である永井哲二によれば、入党の際に厳しい口頭試問が行われていたとのことです。質問の一例では、合法的な無産政党の活動に対する考えを問われ、参加の意思を確認される内容がありました。

もちろん、事件の後も多くの共産党員が活動を続けていました。小林多喜二は、この事件を題材にした作品『一九二八年三月十五日』を発表し、作家デビューを果たしました。また、野坂参三や野坂龍は起訴審理中にソビエト連邦に逃亡し、後に帰国しました。一方、上田茂樹のように逮捕後行方不明になった者や、伊藤政之助のように潜伏生活を送る者もいました。

影響

三・一五事件は、日本国内における共産主義運動に対する抑圧の象徴となりました。このような動きは、その後の赤狩りや白色テロなど、さらなる弾圧の基盤を築くことになります。事件を通じて、政府は共産主義に対する厳しい姿勢を明確にし、それ以降の政治的な緊張関係を強める結果となったのです。

もう一度検索