南回帰線 (曲)

南回帰線

「南回帰線」（みなみかいきせん）は、日本の音楽史において1980年を象徴する楽曲の一つとして記憶されています。この楽曲は、シンガーソングライターである堀内孝雄と、当時新進気鋭の滝ともはるという、二人の男性ボーカリストによる情感あふれるデュエットソングとして誕生しました。

発売背景とリリース情報

本作は、1980年4月25日にシングルレコードとして発売されました。発売元はレコード会社のポリスターです。特に、堀内孝雄にとっては、長年所属していた東芝EMI（現：ユニバーサルミュージックLLC）からポリスターへ移籍して最初にリリースされたシングルという点で、彼のキャリアにおける重要な節目となる作品でした。

CMソングとしての浸透

「南回帰線」が社会現象ともいえるほどのヒットを記録した大きな要因の一つに、サントリービールのテレビコマーシャルソングとして採用されたことが挙げられます。当時のCMは楽曲の持つ爽やかさと力強さを効果的に伝え、お茶の間に広く浸透しました。これにより、多くの人々が楽曲を知るきっかけとなり、その後の大ヒットへと繋がっていったのです。

アーティストのキャリアにおける位置づけ

発表当時、堀内孝雄はフォークグループ「アリス」の活動と並行して、精力的にソロ活動も行っていました。ソロとしては、1978年にリリースしミリオンセラーを記録した大ヒット曲「君のひとみは10000ボルト」以来、新たな代表曲が待望されていました。「南回帰線」は、まさにその期待に応えるソロでの大きな成功作となり、彼のソロアーティストとしての地位を確固たるものにしました。

一方、滝ともはるにとっても、この楽曲はキャリアにおける非常に重要なターニングポイントとなりました。自身の名を広く世に知らしめ、オリコンチャートの週間シングルランキングで初めてベストテン入りを果たすという快挙を達成しました。このヒットは、彼のその後の音楽活動に大きな弾みをつけることとなりました。

商業的成功

「南回帰線」は、商業的にも目覚ましい成功を収めました。オリコン週間シングルチャートでは最高位4位を記録し、長期にわたってチャート上位にランクインしました。最終的なシングルレコードの売り上げ枚数は37.5万枚に達し、これは1980年という時代において、紛れもない大ヒットソングであることを証明しています。この数字は、多くのリスナーに楽曲が受け入れられたことの何よりの証拠と言えるでしょう。

楽曲情報

シングル盤には、「南回帰線」の他にカップリング曲として「大放浪」が収録されています。両楽曲ともに、作詞は叙情的な詞に定評のある山川啓介が手掛け、作曲は堀内孝雄自身が担当しています。そして、温かみのあるアコースティックサウンドを基調とした編曲は、日本の音楽シーンを代表するアレンジャーの一人である石川鷹彦が手掛けています。この強力な制作布陣が、楽曲の世界観をより深めることに貢献しました。

その後の展開

堀内孝雄は、自身のソロアルバム『デラシネ』において、「南回帰線」のソロバージョンを新たにレコーディングしています。デュエットとはまた異なる魅力を放つこのソロバージョンも、多くのファンに聴き継がれています。

「南回帰線」は、発表から40年以上を経た現在でも、当時のCM映像と共に人々の記憶に残る、日本のポピュラーミュージック史に刻まれた名曲と言えるでしょう。

もう一度検索