南堀貝塚

南堀貝塚の概要

南堀貝塚（なんぼりかいづか/みなんぼりかいづか）は、神奈川県横浜市都筑区南山田三丁目にある、縄文時代前期に属する環状集落の遺跡です。この遺跡は7000年前から5500年前にかけて成立し、港北ニュータウン遺跡群の一部として位置付けられています。

発掘の歴史

1955年に行われた発掘調査を契機に、考古学者の和島誠一や岡本勇らがこの遺跡の調査を開始しました。調査の目的は、縄文時代の集落や貝塚から当時の社会構造や生活様式を明らかにすることでした。和島は部分的な発掘ではなく、集落全域を対象にした調査の重要性を認識し、南堀貝塚を選定したのです。

この発掘調査の結果、台地の西側斜面に貝塚が発見され、広場を中心に50を超える竪穴建物が半円形に配置された集落の全貌が明らかになりました。発見された建物群は、黒浜式土器期から諸磯a式土器期に属するもので、縄文時代前期の環状集落の典型的な形態を示しています。

環状配置の意義

和島や岡本は、この集落の特徴である環状配置が、血縁集団の結束によって形成された大規模な共同体を反映していると考えました。集落の中央にあたる広場は、各集団の先祖の墓域としての役割を果たし、その存在が集団間の結束を高め、社会の生産力や縄文文化の発展にも寄与したとされています。

市民参加型の調査

また、この発掘調査は考古学研究者と学生だけでなく、一般市民にも広く呼びかけられました。調査に参加した市民は多い時には一日に100人以上にのぼることもあり、発掘の進捗や重要な発見については、頻繁に広報活動が行われました。この取り組みは、遺跡や文化財に対する一般市民の関心を高め、考古学界だけでなく社会全体に情報を提供する活動の先駆けとなりました。

南堀貝塚の意義

南堀貝塚は、縄文時代の集落の全体像や社会の様子を初めて明らかにした遺跡として高く評価され、一時は歴史教科書にも紹介されるほどの重要性を持っています。また、関連する記録映画《石器時代の村》も制作され、多くの人々にその存在が知られることとなりました。

港北ニュータウン開発とその後

その後、港北ニュータウンの開発が進む中で、南堀貝塚も遺跡群の一部として、1984年から1989年にかけて再び発掘が行われました。この発掘では、広場内に埋まっていた土壙墓群が発見されるなど、新たな知見が得られましたが、調査後に多くの遺跡部分は破壊されてしまいました。現在も台地の南端付近では遺構が残っているとされています。

南堀貝塚は、縄文時代の貴重な文化遺産を今に伝える貴重な場所であり、さらなる研究が期待される遺跡です。

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