南川潤

南川潤

南川潤（みなみかわ じゅん、1913年9月2日 - 1955年9月22日）は、東京府出身の小説家。本名は秋山賢止（あきやま けんじ）。風俗小説で知られ、昭和期の文壇で独自の足跡を残しました。

生涯

東京市日本橋区（現在の東京都中央区）の材木問屋に生まれました。東京府立第一中学校（現在の東京都立日比谷高等学校）を経て慶應義塾大学英文科に進学。大学在学中から文才を発揮し、1936年に小説『掌の性』で第2回三田文学賞を受賞。卒業の年には『風俗十日』で再び第3回三田文学賞を受賞し、北原武夫と並ぶ三田派の新人として注目を集めました。

1940年には、『春の俘虜』で第11回直木賞候補となりますが、惜しくも落選。同年秋には、野口冨士男、十返一、船山馨、田宮虎彦、井上立士、牧屋善三、青山光二らと共に同人グループ「青年芸術派」を結成し、文壇での活動を本格化させました。その後、坂口安吾、平野謙、埴谷雄高、荒正人、大井廣介らが参加していた同人誌『現代文学』にも参加し、幅広い交友関係を築きました。

1944年、妻の郷里である栃木県足利郡菱村（現在の群馬県桐生市）に家族で疎開。戦後の混乱期をそこで過ごしました。1952年には、坂口安吾が南川を頼って桐生に移住。南川は安吾のために住居を世話しましたが、1953年に安吾がブロバリンの大量服用により錯乱状態に陥り、妻に暴行を加えるという事件が発生。この事件をきっかけに、南川は安吾と絶交することとなりました。

晩年は、原水爆廃絶運動に関わり、平和運動に尽力しました。1955年9月22日、脳血管栓塞を発症し、菱村の自宅玄関先で急逝。42歳という若さでした。戒名は超然文雅秀潤居士。死後の1959年には、その平和への貢献が認められ、ウィーン平和賞が贈られました。

作品の特徴

南川潤の作品は、風俗小説というジャンルで知られています。当時の社会風俗や人々の生活、感情を繊細に描き出し、読者の共感を呼びました。初期の作品は、都会的な男女の恋愛や人間関係をテーマにしたものが多く、モダニズム文学の影響を受けていると評されています。戦後は、地方での生活や社会問題を題材にした作品も手がけ、幅広いテーマに取り組んでいきました。

主要作品

風俗十日 (1939年)
春の俘虜 (1940年)
女の部屋 (1948年)
背徳の肖像 (1949年)

著書一覧

風俗十日 日本文学社 1939
果樹園 小説集 昭森社 1940
曲馬館 短篇集 学芸社 1940
生活の設計 時代書房 1941
愛情の建設 時代書房 1941
昔の絵 小説集 洛陽書房 1941
智慧の装ひ 通文閣 1941 (青年芸術派叢書)
都会の子 南方書院 1941
白鳥 今日の問題社 1942 (新鋭文学選集)
結婚 前田書房 1942
結婚創造 淡海堂出版部 1942
昔の言葉 佃書房 1942
人生再建 淡海堂出版 1942
女の土地 南方書院 1943
生活の扉 講談社 1943
女声合唱 増進堂 1944
青春の告白 東方社 1946
紅い花白い花 少女小説 梧桐書院 1948
女の部屋 コバルト社 1948 (コバルト叢書)
窓ひらく季節 臼井書房 1948 (女学生文庫)
いつか来た道 偕成社 1949
背徳の肖像 桐文書院 1949
爽やかな情事 現代情事小説 東京一陽社長野分室 1949.9
愛情の旅 東方社 1950.10
胸にともす灯 東方社 1954
情熱の季節 東方社 1954
炎の女 東方社 1955
夜の賭け 東京社 1955
仮装行列 東方社 1955
風の欲情 鱒書房 1955 (コバルト新書)
妖婦 東方社 1956 (東方新書)

関連項目

日本の小説家一覧

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