南投蒸留所

南投蒸留所の概要と歴史

南投蒸留所（ナントウじょうりゅうじょ）は、台湾南投県南投市にあるタイワニーズ・ウイスキーの蒸留所です。ここは、台湾でウイスキーを製造するために設立された2番目の蒸留所であり、台湾菸酒公司が所有しています。この蒸留所では「オマー」という銘柄のウイスキーが製造されています。

南投蒸留所は、1978年に南投酒廠の一部を利用して設立されました。設立当初は、台湾産フルーツの魅力を引き出すため、主にフルーツワインやブランデーが生産されていました。しかし、1999年9月21日に発生した921大地震が蒸留所に大きな影響を及ぼしました。この地震は台湾で20世紀最大のものであり、南投県が震源地であったため、南投酒廠は壊滅的な損害を受け、損失額は約150億円に達しました。2020年においても、震災の影響が色濃く残っており、生産エリアの異常な広さや、傷んだ設備がその証左となっています。

南投酒廠は当初の経営危機を乗り越え、ウイスキー製造に新たな道を見つけます。工場長がスコットランドでウイスキー造りを学んだことと、国内でウイスキーの需要が高まっていたことが背景にあります。そうして、2007年に従業員食堂の改修を始め、2008年からウイスキーの製造がスタートしました。南投酒廠は、台湾菸酒会社において唯一ウイスキーを製造する蒸留所となり、2013年には初めてのシングルモルトウイスキーを市場に出しました。

製造工程

ウイスキーの原材料となる麦芽は主にスコットランドから調達されています。南投蒸留所では一度の仕込みに2.5トンの麦芽を使用し、通常はピートを使用しない大麦を用いていますが、たまにピーテッド麦芽も使用されます。発酵は、ステンレス製のウォッシュバックを使い、約60～72時間行われた後、蒸留工程に移行します。

蒸留器は台湾国外から輸入した中古品で構成され、そのサイズや形状も異なります。初留釜には5000リットルと9000リットルのものがあり、イタリアのフリッリ社やスコットランドのフォーサイス社の製品が含まれています。再留釜もまた、蒸留業界では珍しい構成に仕上がっています。さらに、熱帯の気候に合わせた冷却設備も導入されています。

熟成と樽の使用

南投蒸留所では、業界内のコネクションを利用し、多様な樽を使用して熟成を行っています。樽の数は約15000丁に達し、バーボン樽やシェリー樽などが豊富に揃っています。特に新樽は、アメリカのIndependent Stave Company製の高級品が使用されています。熟成庫は3棟あり、総熟成可能容量は2万樽に及びます。

台湾特有の気候により、熟成は速やかに進行し、天使の取り分は6％から7％に達します。これは、スコットランドや日本の約2％、4％に比較すると明らかに高い数字です。これにより、短期間の熟成でも濃厚な琥珀色のウイスキーが完成します。

主な製品と評価

2007年以前は海外から原酒を輸入していた南投蒸留所ですが、2013年以降は独自に製造した原酒を用いたウイスキーの販売を行っています。「オマー」（OMAR）はその代表的な商品で、通常3から5年熟成のウイスキーです。この名はゲール語の「琥珀」に由来し、スコットランドの製造方法を尊重した命名です。

オマーは、2014年以降の国際的なウイスキー品評会で高い評価を得ており、特にウイスキー評論家のジム・マレーによる「ウイスキー・バイブル」2020版では、ワールドベストシングルカスク及びベストアジアンウイスキーの2つにおいて受賞する栄誉に輝いています。これは、台湾のウイスキーとしての新記録でもあります。

南投蒸留所はその歴史や得意な製法、ユニークな製品で業界内での地位を確立しているのです。

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