南方三十三館

南方三十三館とは

「南方三十三館」とは、中世の常陸国南部（現在の茨城県鹿行地域）に勢力を持っていた大掾氏一族の国人たちの総称です。実際に33の館があったわけではなく、鹿島・行方両郡に多くの城主がいたことを強調するために「33」という数字が使われたと考えられています。「南方」という呼称は、近世常陸の中心地である水戸から見て、彼らの所領が南方に位置していたことに由来します。

「南方三十三館」謀殺事件

天正19年（1591年）2月9日、佐竹義重・義宣父子は、鹿島・行方両郡の有力者たちを太田城に招き、謀殺しました。この時、殺害されたのが「南方三十三館」と呼ばれた大掾氏一族を中心とする国人たちです。

和光院過去帳に記された犠牲者

『群書類従』に収録されている「常陸国田島村伝燈山和光院過去帳」には、佐竹氏によって殺害された16人の名前が記されています。具体的には、以下の9氏です。

鹿島殿父子
鹿島清秀とその子。
鹿島氏は、常陸平氏鹿島流。
清秀の室は、鹿島城で徹底抗戦し、落城後自害した。
カミ
鹿島清秀の室。
島崎殿父子
島崎安定とその子徳一丸。
島崎氏は、常陸平氏行方流。「行方四頭」の一つ。
玉造殿父子
玉造重幹とその子。
玉造氏は、常陸平氏行方流。「行方四頭」の一つ。
中居殿
中居秀幹。
中居氏は、常陸平氏鹿島流。
釜田殿兄弟
烟田通幹と弟。
烟田氏は、常陸平氏鹿島流。
アウカ殿
相賀氏の当主。清和源氏とも常陸平氏行方流手賀氏ともいわれる。
小高殿父子
行方(小高)治部少輔とその子。
小高氏は、常陸平氏行方流。「行方四頭」の一つ。
手賀殿兄弟
手賀氏の兄弟。
手賀氏は、常陸平氏行方流。
武田殿
武田七郎五郎。
武田氏は、甲斐武田氏の一族とも、南北朝期から活動していた武田氏とも言われる。

六地蔵寺過去帳

『群書類従』に収録されている「常陸国茨城郡六段田村六地蔵寺過去帳」には、島崎父子が「上ノ小川」で殺害されたと記されています。太田城と上小川は離れており、殺害場所が複数あったことが示唆されます。

その他の所伝

鹿島清秀父子は山方城（常陸大宮市山方）で殺害されたという説もあります。
中居秀幹は里野宮村（常陸太田市里野宮町）で、烟田通幹は常福寺村（常陸太田市常福地町）で討たれたという説があります。
札氏、青柳武田氏は佐竹氏の捜索を逃れたと伝えられています。
* 玉造通幹は大窪正伝寺（日立市大久保町）で自害したと伝えられています。

事件後

佐竹氏は、「南方三十三館」の国人当主たちを粛清後、ただちに鹿島・行方両郡を制圧しました。同時期に額田城の小野崎昭通を没落させたことで、常陸平定を完成させました。

まとめ

「南方三十三館」の悲劇は、戦国時代の終焉を象徴する出来事の一つです。佐竹氏の常陸統一という大きな流れの中で、多くの国人たちがその命を落としました。この事件は、地方豪族の盛衰と戦国時代の激しさを今に伝えるものとして、歴史の中に刻まれています。

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