南東ペンシルベニア交通局M-3形電車

南東ペンシルベニア交通局M-3形電車：アメリカのステンレス電車

南東ペンシルベニア交通局（SEPTA）M-3形電車は、かつてフィラデルフィア交通会社（PTC）が運営していたマーケット・フランクフォード線（ブルーライン）で使用されていた電車です。この車両は、日本初のオールステンレス車両である東急7000系電車のデザインに影響を与えたことで知られています。

概要

1907年から運行を開始したマーケット・フランクフォード線では、長らく鋼製電車が使用されていました。しかし、1960年代にはこれらの車両の老朽化が深刻化し、その代替としてM-3形電車が導入されました。

M-3形電車は、バッド社によって製造されたステンレス製の車両です。車体側面には3箇所の両開き扉が設けられ、前面は運転台が設置された左側のみに窓がある特徴的なデザインでした。前面上部はFRPで作られており、車内はセミクロスシートが配置されていました。屋根上には4基の通風機が設置され、その形状から「アーモンド・ジョイ」という愛称で親しまれていました。

台車には空気ばね方式が採用され、1両あたり4基の主電動機（100HP）を搭載。これにより、従来の鋼製電車と比較して3倍の加速度を実現し、所要時間の短縮に貢献しました。

M-3形には、単行運転が可能な両運転台タイプ（A-49形）と、2両固定編成を組む片運転台タイプ（A-50形、A-51形）の2種類が存在しました。SEPTAへの運営移管後、これらの形式はM-3形に統一されました。

運行

M-3形電車は1960年7月から営業運転を開始し、翌1961年1月までに270両が導入され、従来の鋼製車両を置き換えました。全線走行時の所要時間は6分短縮されましたが、乗り心地は従来の車両よりも劣るとも言われました。しかし、その後も40年近くにわたり、マーケット・フランクフォード線の主力として活躍し、映画「ロッキー」シリーズにも登場しました。

1990年代に入り、老朽化が進行したため、1998年4月からアドトランツ製のM-4形電車による置き換えが開始され、1999年に引退しました。引退後、ほとんどの車両は解体されましたが、606号車がフィラデルフィア路面電車博物館、618号車がシーショアー路面電車博物館に保存されています。

影響

M-3形電車は、日本の鉄道車両にも大きな影響を与えました。東急車輌製造がバッド社と技術提携を行い、東急電鉄7000系電車を製造する際、M-3形の車体デザインが参考にされました。その結果、7000系電車は日本初のオールステンレス車両として登場し、日本の鉄道車両史に新たな足跡を刻みました。

M-3形電車は、フィラデルフィアの公共交通を支え、日本の鉄道技術にも貢献した、記憶に残る車両です。

もう一度検索