南海の簡易半鋼車

南海の簡易半鋼車について

南海電気鉄道の前身である南海鉄道が1939年から1944年にかけて製造した簡易半鋼車は、木造電車を簡素な方法で鋼体化した車両の総称です。その背景には、木造車体を鋼製に変える必要性がありました。1931年に鋼体化されたクハユニ505形を皮切りに、南海では木造車両の鋼体化が推進されていましたが、進捗が芳しくないことも事実でした。

概要と改造工程

南海では木造車両の改造において、一部の電装品を再利用することはあるものの、大部分は新造に近いとされていました。そのため、改造には時間がかかり、進行が遅れていました。また、対象となる車両が非常に多かったことで、改造工期の短縮が課題となりました。そこで、木造車の台枠や屋根、窓枠、扉などを再利用して効率的に鋼体化する工程が採用されたのです。この新しい工程によって、工期の短縮が実現し、簡易半鋼車と呼ばれるようになりました。

南海では、1939年にタマゴ形の前面に5枚の窓を持つ「丸電」として知られる木造車を多く採用しました。これらの車両は、ゼネラル・エレクトリック製の主制御器を装備していました。窓は小さく見えるものの、流用された扉は狭く設計されたため、混雑時には乗降に支障をきたすこともありました。こうした問題を解消するために、後期には新製の広幅の扉が採用されました。

変遷と運用状況

簡易半鋼車の鋼体化は、第二次世界大戦中の資材が入手困難になるまで続けられました。1944年に施工された車両が最後となり、最終的に38両が完成しました。戦争中には7両が焼失するなど、大きな影響がありましたが、戦後は形式や車番の変更が盛んに行われ、安定した運用がなされました。1955年には、モハ1031形やモハ1061形、クハ1818形など、6形式31両が在籍していました。

鋼製車両の中では居住性や耐久性が劣るため、簡易半鋼車は次第に淘汰されていきました。モユニ1041形以外は1968年までに廃車され、その後も南海本線での郵便・荷物輸送に一部使用されましたが、1973年には完全に姿を消しました。

他社への譲渡

数両は他社にも譲渡され、水間鉄道に貸与されたモハ1031形1037とクハ1821形1825がその例です。1966年に譲渡されたこれらの車両は、阪急マルーンに塗装が変更されましたが、1971年には廃車となりました。

補足情報

簡易半鋼車の中で特に注目すべきは、クハユ1871形です。この車両は、急勾配区間での運用を念頭に置いて特別に製造されましたが、わずか1年で大破し、戦火にさらされて失われました。クハ1818形については、高野線の急勾配区間への乗り入れに使用されていましたが、これもまた制御器の変更などを経て、後には南海線で運用されました。

簡易半鋼車は, 南海の鉄道史において重要な役割を果たし、効率化を目指した工夫が感じられる興味深い車両群でした。

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