南海天王寺支線

南海電気鉄道天王寺支線：大阪の街を駆け抜けた短い歴史

南海電気鉄道天王寺支線は、大阪市西成区の天下茶屋駅から天王寺区の天王寺駅を結んでいた路線です。1900年の開業から1993年の廃止まで、わずか93年の歴史を刻みました。その短いながらも重要な役割、そして廃線後の姿について見ていきましょう。

開業から衰退へ：大阪市街地を繋ぐ重要な路線

南海鉄道（南海電気鉄道の前身）は、大阪鉄道との相互乗り入れを目的に、天王寺支線を建設しました。当時、南海電鉄は難波駅を拠点としていましたが、大阪鉄道天王寺駅を経由することで、大阪駅へのアクセスを容易にする狙いがありました。

開業当初は、住吉駅（現在の粉浜駅-住吉大社駅間にあった駅）と大阪駅を結ぶ直通列車も運行され、旅客輸送だけでなく貨物輸送にも貢献しました。しかし、1961年の国鉄大阪環状線開業、そして1964年には南海本線との交差地点に新今宮駅が開設されたことで、天王寺支線の利用者は激減。1977年には貨物営業も廃止され、路線の衰退は加速しました。

部分廃止と全線廃止：時代の流れに抗えず

1970年代、天下茶屋駅付近の高架化事業に伴い、天王寺支線の全線廃止が検討されました。地元からの強い要望を受け、1984年には天下茶屋駅 - 今池町駅間が部分廃止され、残りの区間は暫定的に運行を続けました。この際に全線が単線化され、飛田本通駅が新設されました。

部分廃止後も、今池町駅と南海本線萩ノ茶屋駅間で運賃を通算する制度が設けられましたが、利用客の減少に歯止めをかけることはできませんでした。そして、1993年、残存区間の運行も終了し、天王寺支線は全線廃止となりました。同年、天王寺支線の廃止区間の用地を活用して、大阪市営地下鉄堺筋線が延伸開業したことは、皮肉な巡り合わせと言えるでしょう。

廃線跡の現在：新たな姿

廃線後の天王寺支線跡地は、様々な姿へと生まれ変わりました。多くの区間は、駐車場や遊歩道、商業施設などに転用されています。天王寺駅付近では、かつての線路跡に商業施設「天王寺ミオ」が建設されています。また、一部区間では、線路や標識の一部が現在も残っており、歴史の痕跡を感じることができます。

天王寺支線の概要

まとめ：時代と共に消えた路線

天王寺支線は、大阪市の発展とともに歩み、そして時代の流れと共に消えていった路線です。その短い歴史は、都市開発と鉄道のあり方の変化を象徴する存在と言えるでしょう。廃線跡を訪れる際には、かつてこの地を駆け抜けていた電車の姿を想像してみてはいかがでしょうか。

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