南海治乱記

『南海治乱記』（なんかいちらんき）は、江戸時代初期の寛文3年（1663年）に香西成資によって刊行された、四国地方（南海道）の中世史を扱った通史です。

本書は、単なる歴史の記録に留まらず、将軍職の由来に始まり、四国の武将たちが足利氏に服属した時代から、豊臣秀吉による九州・四国征伐に至るまでの流れを詳細に記述しています。戦国時代の終焉までを描き切った内容となっています。

全17巻から構成されており、特に注目すべきは、香西成資自身の一族である香西氏のその後を記した「巻の十六　四国乱後記」と、香西成資が幼少の頃から一族の古老たちから直接聞き取った戦国時代の貴重なエピソードを綴った「巻の十七　老父夜話記」です。これらの巻は、当時の社会情勢や人々の生活、武将たちの息遣いを生き生きと伝えており、歴史研究における一次資料としての価値も高く評価されています。

また、香西成資は本書の刊行後も補訂作業を続け、後に全21巻からなる『南海通記』としてまとめられました。この増補改訂版も、四国地方の歴史を研究する上で重要な資料となっています。

現代においては、教育社新書から『南海治乱記』(上中下)として現代語訳が出版されており、原文に親しむことが難しい現代人でも、容易に本書の内容に触れることができるようになりました。これにより、四国地方の歴史や文化に対する理解がより一層深まることが期待されます。

『南海治乱記』は、単なる歴史書としてだけでなく、戦国時代の社会や文化、人々の生活を知るための貴重な情報源として、その価値は今日においても色褪せることはありません。四国地方の歴史に興味を持つすべての人にとって、必読の書と言えるでしょう。

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