南福岡車両区

南福岡車両区（みなみふくおかしゃりょうく）は、福岡県福岡市博多区寿町に所在する九州旅客鉄道（JR九州）が管轄する大規模な車両基地です。JR九州の本社鉄道事業本部の直轄下にあり、鹿児島本線の南福岡駅構内に位置しています。

この車両基地は、福岡周辺の近郊輸送を担う通勤・近郊形電車から、JR九州の主要な在来線特急列車に使用される特急形電車まで、多種多様な車両を収容しています。その在籍車両数は合わせて500両を超え（2023年4月1日現在）、JR九州が有する車両基地の中では最大の規模を誇ります。車両の日常的なメンテナンスや検査などもここで行われています。

また、組織上は南福岡車両区とは別に、乗務員が所属する南福岡運転区が存在します。両者は2010年にそれまでの南福岡電車区から分離独立しましたが、歴史的な経緯や機能的に関連が深いため、本項では主に車両区について解説しますが、一部運転区に関する情報も含まれます。

歴史

南福岡車両区の敷地は、第二次世界大戦中に存在した九州飛行機の工場跡地を利用して建設されました。工場跡地の形状から奥行きが短く、本線と並行に車両を配置することが困難であったため、現在のような本線に対して斜めに車両が配置される独特なレイアウトが採用されました。

1960年 10月14日、九州島内の交流電化の進展に合わせて、当時の日本国有鉄道（国鉄）の雑餉隈駅（現在の南福岡駅）構内に「南福岡電車区」として開設されました。開設当初は門司鉄道管理局の管轄で、「門ミフ」という略号が使用されていました。最初に配置された営業用車両は、近郊輸送向けの421系電車でした。その後、昭和40年代に入り、九州全域の電化区間が拡大し、九州と本州を結ぶ優等列車の運行が増えるにつれて、特急形や急行形の電車も多数配置されるようになりました。

国鉄分割民営化に伴い、1987年 4月1日からはJR九州本社の直轄となり、略号は「本ミフ」に変更されました。2001年 4月1日には、新設された北部九州地域本社の管轄に移管され、略号も「北ミフ」となりました。しかし、2010年 4月1日の組織再編により、運転部門が南福岡運転区として分離されるとともに、車両・検修部門が南福岡車両区として再編成され、再びJR九州本社の直轄に戻りました。この再編により、車両に記される略号は再び「本ミフ」となっています。この略号は、本社直轄を示す「本」と、南福岡の電報略号である「ミフ」を組み合わせたものです。

配置車両

南福岡車両区には、2023年4月1日現在、以下の形式の電車が配置されています。編成記号の末尾に含まれる「M」は、この車両区の所属を示す記号です。

783系電車 (CM編成)
特急「きらめき」「みどり」「ハウステンボス」「かささぎ」などで使用される車両です。合計56両が在籍しており、「みどり」色、特急「ハウステンボス」色、リニューアル色など、様々な塗装の編成があります。過去には増結用の車両が廃車されたり、編成の組成が変更されたりしています。
787系電車 (BM編成)
特急「リレーかもめ」「かささぎ」「きらめき」「にちりん」「にちりんシーガイア」「ひゅうが」「かいおう」など、幅広い特急列車で活躍しています。8両編成と6両編成があり、合計96両が配置されています。観光列車「36ぷらす3」として運行される編成（BM363編成）も当車両区に所属しています。以前は長崎本線系統の「かもめ」や「みどり」での運用が中心でしたが、ダイヤ改正で運用範囲が広がっています。
885系電車 (SM編成)
特急「リレーかもめ」「みどり」「かささぎ」「ソニック」といった主要な特急列車に使用されています。6両編成が11本、合計66両が配置されています。かつては「かもめ」用（黄帯）と「ソニック」用（青帯）で区別されていましたが、運用の柔軟性を高めるため、現在は青帯に統一が進んでいます。
811系電車 (PM編成)
近郊形電車として、鹿児島本線、日豊本線、長崎本線、佐世保線といった福岡都市圏およびその周辺の主要路線で広範に運用されています。合計27編成108両が所属しており、0番台、100番台、1500番台、2000番台、2100番台、7600番台、8100番台など、様々なバリエーションがあります。一部編成（PM7609, PM8105）には検測装置が搭載されており、「811 REDEYE」として検測運転にも使用されます。
813系電車 (RM編成)
811系と同様に、鹿児島本線を中心に長崎本線、佐世保線、日豊本線など、広範囲で活躍する主力近郊形電車です。3両編成が73本、合計219両が配置されており、JR九州の近郊形車両の中心的な存在です。0番台から3500番台まで多岐にわたるグループがあります。
817系電車 (VM編成)
主に鹿児島本線で運用されるロングシート仕様の近郊形電車です。3000番台の3両編成が11本、合計33両が配置されています。かつては0番台も所属していましたが、現在は全て転出しています。

過去の配置車両

かつて南福岡車両区（南福岡電車区時代を含む）には、以下のような様々な形式の車両が配置されていました。

581系・583系電車
485系電車
475系・457系電車
421系・423系電車
713系電車
715系電車
クモヤ740形電車（牽引車）

また、近年まで配置されていたものの、他区所へ転属した車両としては、821系電車（熊本車両センターへ全編成転属）や415系電車（大分車両センターへ全編成転属）などがあります。

南福岡運転区の乗務範囲

南福岡運転区の乗務員は、主に以下の区間で列車に乗務しています。

鹿児島本線：門司港駅 - 荒尾駅間
長崎本線：鳥栖駅 - 肥前浜駅間
佐世保線：全線

南福岡車両区は、JR九州における多様な車両のメンテナンスと供給を担う、極めて重要な役割を果たしています。

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