南緯85度線

南極大陸の広大な氷の大地を横断する南緯85度線は、地球上の重要な位置を示す緯線です。赤道面から南に85度の角度で走るこの線は、地球の南極点からおよそ555キロメートル離れた位置にあり、南極大陸とその周辺の棚氷を貫いています。

この緯度の地域では、地球の自転軸と公転軌道が織りなす独特の現象、白夜と極夜が一年を通して交互に訪れます。10月4日頃から3月9日頃までの約5ヶ月間は、太陽が地平線の下に沈まず、白夜が続きます。一方、4月5日頃から9月7日頃までの約5ヶ月間は、太陽が地平線上に昇らず、極夜が続きます。これは、南極圏特有の、極端に長い昼と夜が存在する環境です。

南緯85度線は、地図作成においても興味深い特徴を持っています。一般的にウェブ地図で使用されるメルカトル図法では、南緯85度線（正確には南緯85.051129度線）が地図の表示限界となっています。この緯度で地図を切り出すと、地図の縦横比が1:1となり、正方形に近似した形になるという幾何学的な理由から、多くのウェブ地図はこの緯度を南限に設定しています。また、南緯85度線より南には、南極大陸が広がるのみであり、一般のウェブ地図利用において、それより南の地域を表示する必要性は低いと言えるでしょう。

南極大陸は、未開の地が多く、極寒の気候と厳しい自然環境により、人間の活動は限られています。研究基地や観測所が点在するものの、ほとんどは人の手が入っていない手つかずの自然が広がっています。この厳しい環境は、独特の生態系を育み、多くの研究者や探検家を魅了し続けています。南緯85度線は、その手つかずの自然と、地球の自転という自然現象が織りなす神秘的な世界への入口と言えるでしょう。

南緯85度線の存在は、地球の地理学的な位置を示すだけでなく、地球規模の気候変動や生態系の研究、そして地図投影法といった様々な分野において重要な意味を持っています。この緯線を通過する地域を理解することは、地球全体の理解を深める上で役立つでしょう。南緯84度線や南緯86度線といった、周辺の緯線と比較検討することで、南極大陸とその周辺の地理的特徴をより詳細に理解することができるでしょう。

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