南部利用 (吉次郎)

南部 利用（なんぶ としもち）

南部利用は江戸時代後期に陸奥国盛岡藩の第11代藩主として知られています。彼の名は多くの人に知られていますが、実際には同名の人物が二人存在しており、ここではそのうちの一人について焦点を当てます。本当に彼を語るためには、彼の生い立ちや家庭背景から始める必要があります。

生い立ち

南部利用は文化4年12月19日（1808年1月16日）に、盛岡藩の中屋敷南部家当主である南部信丞の長男として生まれました。信丞は、第7代藩主である南部利視の孫であり、また第10代藩主の南部利敬の従兄弟でもありました。こうした家系から生まれた彼は、母方では南部利正の娘を母に持つという特異な背景を有していました。

藩主への道

幼少の頃には「駒五郎」と名付けられた彼は、後に「吉次郎」という名でも知られました。南部家の養子として成長する中で、文化年中に南部利敬の養子となり、藩主に欠かせない存在としての責任を負うことになりました。彼の未来は、加賀藩主である前田斉広の娘との婚約にも現れており、盛岡藩の繁栄を担う期待が寄せられていました。

しかし、文政3年（1820年）に藩主であった南部利敬が急死すると、南部利用は家督を継ぐことになります。その際、まだ若年の彼を支えるために、又従兄である南部信鄰が盛岡に降りて藩政の実務を補佐しました。

短命の藩主

南部利用の藩主としての道のりは、残念ながら長く続くことはありませんでした。文政4年（1821年）の5月、若き藩主は庭で遊んでいる最中に不幸にも転落し、その怪我が原因で8月21日に亡くなってしまいました。享年はわずか15歳という短い人生でした。

彼の死は、盛岡藩にとって大きな混乱をもたらしました。11代将軍の徳川家斉との正式な御目見せを果たすこともなく、また藩が改易や減封されることを恐れた家臣たちが新たに立てたのが、南部信浄の三男である善太郎です。彼は見た目が利用と非常に似ていたため、この若い藩主としての役を担われることとなりました。

事件の影響

利用の死から数ヶ月前には、盛岡藩内で発生した相馬大作事件も影響を与えました。この事件は藩士たちの士気を試されるものであり、藩の安定に多くの試練をもたらしました。これらの出来事は、後の盛岡藩の歴史において忘れてはならない教訓とされています。

まとめ

南部利用の短い人生はわずか15年で終わりましたが、彼の存在は藩の歴史に深く刻まれています。亡くなった後の家臣団の動きや身代わり立ての事件は、当時の政治的混乱と藩主としての重責を如実に物語っています。彼の物語は、時代の流れの中で消えていった一つの生命の軌跡ですが、盛岡藩の歴史においては重要な一片となっています。

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