減封

減封（げんぽう）

減封とは、江戸時代から明治時代初期にかけて、幕府や政府が武士に対して行った刑罰の一つで、所領や城、屋敷の一部を削減することを指します。大名や旗本といった武士が対象となり、その所領の一部を没収、削減するもので、武士の身分や経済力に大きな影響を与えました。

概要

江戸時代には、幕府の命令に背いたり、法に違反したり、後継者が途絶えたりした場合に、大名や旗本に対して改易や減封が頻繁に行われました。特に、徳川家康、秀忠、家光の3代、つまり幕府成立初期の50年間には、217家もの大名が改易や減封となり、その総石高は875万石以上にも及んだとされます。これにより、多くの武士が浪人となり、社会不安の一因となりました。

この時期の浪人の数は40万から50万人に達したと推定されており、これは当時の社会に大きな影響を与えました。

減封は、単に領地を減らすだけでなく、武士の家格や権威を低下させる効果もありました。そのため、減封を受けた武士は、経済的に困窮するだけでなく、精神的にも大きな打撃を受けました。

関ヶ原の戦い後の減封

関ヶ原の戦いでは、西軍についた大名や、中立の立場を取ったものの、幕府に反抗的とみなされた大名に対して、大規模な減封が行われました。

西軍に属した大名の減封例
宇喜多秀家
毛利輝元
上杉景勝
小西行長
長宗我部盛親

中立、東軍に属したが減封された大名
佐竹義宣
福島正則
加藤嘉明

これらの減封は、徳川幕府が全国の大名を統制し、自身の権力を確立する上で重要な役割を果たしました。

江戸時代の減封、分封

江戸時代には、上記のように関ヶ原の戦い後だけでなく、幕府の政策や大名の不祥事などによって、減封や分封が頻繁に行われました。分封とは、所領を分割して相続することを指し、これもまた、大名の経済力や権威を低下させる効果がありました。

戊辰戦争後の減封

戊辰戦争後の減封は、江戸時代とは異なり、改易は少なく、政府に反抗した藩主本人の蟄居と、後継者の減封で済まされる場合が多くありました。これは、戊辰戦争が全封建領主階級を新政府のもとに統合するためのものであり、朝敵藩の改易が目的ではなかったためです。

例外的に改易となったのは、上総国請西藩の林家のみですが、この林家も後に300石を与えられて士族に列し、更に華族の男爵に叙せられました。朝敵藩から没収した領地は約100万石に及びましたが、これは主に賞典禄の財源に充てられました。

備考

一度改易された後に存続を許された事例も、減封として扱われることがあります。これは、単に所領を減らすだけでなく、家格や権威を低下させるという、減封の持つ意味合いを考慮したものです。

関連項目

お家騒動

減封は、武士社会における刑罰の一つであり、その影響は経済的なものだけでなく、武士の家格や権威にも及ぶものでした。歴史を理解する上で、この減封の制度を把握することは、非常に重要です。

参考資料

小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社〈中公新書1836〉、2006年
* 大久保利謙『日本の肖像―旧皇族・華族秘蔵アルバム〈第5巻〉』毎日新聞社、1989年

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