南部利義

南部 利義（なんぶ としとも）

南部利義は、江戸時代後期に活躍した大名で、陸奥国盛岡藩の第13代藩主です。彼の官位は正四位・甲斐守で、藩主としての名前は信侯や利道でありましたが、隠居後に利義へと改名しました。彼の生涯は、さまざまな政治的出来事や個人的な葛藤に満ちています。

経歴

利義は、第12代藩主である南部利済の長男として生まれ育ちました。彼の教育は、安宅中務、花輪栄、戸沢済彰、横沢兵庫らの伝役により成されました。1836年12月1日、11代将軍・徳川家斉と対面し、その後、同年の12月28日に従四位下・甲斐守に叙任されました。

しかし、彼の藩主としての道は順調ではありませんでした。天保7年の南部南方一揆や嘉永元年の三閉伊一揆が発生し、父である利済が隠居を余儀なくされた後、利義は家督を継ぐことになりました。しかし、参勤交代で江戸にいたため、父の復権を図る派閥からの圧力を受け、嘉永2年には藩主の座を追われました。そのため、実質的には藩主としての地位は1年余りでありました。

利義はその後、隠居し、実弟の利剛を養子に迎え、家督を譲りました。世子時代に父の悪政を目の当たりにしていた利義は、その後も利済との関係が悪化し、家中では派閥争いが続いていました。この当主交代に反発した反利済派の東堂一堂らは、翌年には処分されることとなり、利済及びその家臣による院政がしばらく続きました。さらに、利義の毒殺を企てた重臣もいたものの、その計画は失敗に終わりました。

国や藩内では一揆首謀者に対して厳しい取り締まりが続き、隠居後の利義は麻布の下屋敷で静かな生活を送っていました。しかし、嘉永6年には領民からの復帰の要求があったものの、藩はそれを拒否しました。この騒動の中で、利義の父も蟄居を命じられる事態となりました。

隠居後の利義は粗暴な行動が目立ち、1855年には老中の命令により下屋敷に押し込められました。その年の4月には、父の利済が亡くなりますが、その後も彼は盛岡に帰ることはなく、幕末の藩政には影を落とす存在として過ごしました。明治維新後に盛岡に戻った彼は、趣味人としての晩年を送ります。

1888年8月21日に彼は79歳で亡くなりました。

人物

世子時代の利義は、内外から高く評価されていました。特に徳川斉昭からの支持を受け、西欧の文化にも興味を示しながら生きていました。また、砲術の腕前もあり、「砲術講義」といった著作も残していますが、短い藩主期間中にはその才能を最大限発揮する機会はなかったと言えます。

栄典と改名

利義は1885年に正四位を受け、これが彼の生涯における一つの功績でした。彼の名前は、謹保、信侯、利道、利義と変遷していきました。

系譜

利義の父は南部利済、母は烈子であり、正室は豊子でした。利義には複数の側室が存在し、男子の利剛が彼の実弟として養子となりました。

彼の波乱の多い生涯は、幕末の藩政と深く絡んでおり、苦悩や葛藤が色濃く見られる歴史的な人物として、後世に影響を与えています。

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