占事略决

『占事略決』の概要

『占事略決』は平安時代の陰陽師、安倍晴明によって編纂されたとされる、日本における最も古い陰陽道に関する書籍です。撰者の安倍晴明の没年は1005年とされており、彼の生前に成立したと考えられています。この書物はその内容から、占い技術や陰陽道に関する貴重な情報源として知られています。

書物の構成と内容

『占事略決』は全36章から成り立っており、各章は様々な占い方やその背景に関する手続きや理論を解説しています。特に著作の初めでは、占うための基本的な手続きや技術の説明が行われ、後半では具体的に占う目的別の方法が説明されます。

占術としては「六壬神課」が取り上げられ、この占術は太乙神数や奇門遁甲と共に「三式」として知られています。そのため、六壬神課は平安時代から鎌倉時代にかけて、陰陽師にとって不可欠な技術とされ、多くの占いの際に使用されました。特に、朝廷からの諮問に対し、六壬神課を用いて占った結果が報告されることが多く、これらの報告の一部は現在も残っています。

占い方の解説

本書では特に、「四課三伝法第一」という章から始まり、具体的な占い方に繋がる手続きが明示されています。解説は、占いやその占術の基本的な考え方、また占う際の注意点などが詳細に記されており、実践的な視点が貫かれています。

具体的に、26章目には「注目すべき36種類の卦とその象意」というテーマがあり、様々な卦の型や意味合いについての具体的な解説も含まれています。これは当時の人々の生活、特に堂上家がどのように占いを利用していたのかを知る手助けとなります。

原本と写本の多様性

『占事略決』には多くの写本が存在し、その中には鎌倉時代のものや江戸時代に書写されたものがあります。最古の写本とされているのは安倍晴明の子孫によって書写されたもので、各書の間には微細な差異が見られています。たとえば、京都大学附属図書館蔵本と尊経閣文庫蔵本では、本文の記述に相違があり、これは写本にも異なる系統があることを示しています。

安倍家における位置づけ

安倍家では『占事略決』は単なる占いの方法を記した文献としてだけでなく、伝承の一部として重要視されてきました。具体的な知識の伝達手段として、家伝に基づく部分も多く、特にその目録的な性格からも安倍家内での役割は大きかったとされています。

研究の現状

小坂眞二による『占事略決』の研究では、平安時代の六壬神課に関する復元が進められており、またこの書を基にその後の文献との比較も行われています。全体として、比較的平易な漢文で技術が記述されているものの、内容の理解には専門的な知識が求められます。

最近の関心

近年、陰陽師や安倍晴明に関するブームがあり、従来の文献に新たな視点で目が向けられています。この影響で『占事略決』の存在も広く知られるようになり、さまざまな文化作品への影響も見られるようになってきました。

『占事略決』は様々な占術や理論を理解するための貴重な資料であり、今後もその研究は続けられることでしょう。

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