卯月妙子

卯月妙子：波乱万丈な人生をユーモラスに描く漫画家

卯月妙子（うづき たえこ）は、1971年12月30日生まれ、岩手県宮古市出身の漫画家、エッセイストです。彼女の人生は、漫画家、エッセイストとしてだけでなく、元AV女優、SMストリッパーという異色の経歴によって彩られています。

デビューと苦難の時代

1991年に『タブー』（三和出版）で漫画家としてデビュー後、SM雑誌などを中心にエッセイ漫画を発表していました。初期の頃は必ずしも順風満帆ではなく、苦労を重ねながら活動を続けていました。転機となったのは、『マンガ・エロティクス』（太田出版）で発表したコミックエッセイ『実録企画モノ』でした。この作品が話題を呼び、徐々にファンを獲得していきました。ちなみに、名前の由来は「疼きたい子」であるとされています。

壮絶な私生活

私生活では、重度の発達障害を持って生まれ、10歳の頃から幻聴や幻覚に悩まされていたという過酷なものでした。中学3年生の時に初めて自殺未遂を図り、19歳から統合失調症の治療を開始するなど、精神的な苦しみを抱えながら生きてきました。20歳で結婚し一児をもうけますが、元夫の会社が倒産。借金返済のためにホステス、ストリップ嬢、そしてAV女優として働くことになります。AV女優時代には、排泄物や嘔吐物、ミミズを食べるなどの過激な内容の作品に出演し、カルト的な人気を得ました。

しかし、さらなる悲劇が彼女を襲います。精神病を患っていた元夫が投身自殺（のちに死亡）してしまうのです。この出来事をきっかけに、幼少の頃から悩まされていた統合失調症が悪化。自傷行為や殺人欲求に苦しみ、入退院とオーバードーズを繰り返す日々を送ります。手の震えから漫画を描くことすら困難になり、一時断筆状態に陥りました。

閉鎖病棟への入院と自殺未遂を繰り返しながらも、舞台女優として活動を続けましたが、2004年には新宿のストリップ劇場で舞台上で喉を刃物で切る自殺未遂を起こします。3日間意識不明となるも一命を取り留め、その後舞台復帰を果たしますが、2009年には歩道橋から投身し、顔面崩壊と片眼失明という大怪我を負いました。それでも彼女は諦めず、2011年に再び舞台に復帰しています。

『人間仮免中』とその後

2012年、2002年に刊行された『新家族計画』の2巻以来、10年ぶりとなる描き下ろし単行本『人間仮免中』を発表。自身の近況を描いた自伝的な内容が大きな反響を呼びました。同作は「このマンガがすごい!2013」オトコ編3位、『本の雑誌』が選ぶ2012年度ベストテン第1位など、数々の賞を受賞し、高い評価を得ました。2022年時点での発行部数は12万5000部を記録しています。

その後も、アートプログラムへの参加や、『人間仮免中』の続編となる『人間仮免中つづき』の出版、公式Twitterでのネーム公開など、精力的に活動を続けています。

作風

卯月妙子の作品は、実体験に基づいたエッセイ漫画が中心です。自身の過激な体験や絶望的な出来事を、ユーモラスに、そして明るく表現する作風が特徴的です。シリアスな内容でありながらも、全体的にはギャグ漫画のような雰囲気で描かれており、読者を引き込む魅力があります。

主な作品

実録企画モノ
新家族計画 Vol.1、Vol.2
人間仮免中
人間仮免中つづき
* 鬱くしき人々のうた　実録・閉鎖病棟

まとめ

卯月妙子は、波乱万丈な人生を歩みながらも、漫画家として、そして一人の人間として、力強く生きる姿を私たちに見せてくれます。彼女の作品は、多くの人々に勇気と希望を与え続けています。

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