即時グロス決済

即時グロス決済（RTGS）とは

即時グロス決済（Real Time Gross Settlement、RTGS）は、資金移動システムにおける決済処理方式の一つです。この方式では、個々の決済取引が発生するたびに、その都度、即時に資金の移動が行われます。これは、取引ごとの決済を個別に行うことで、決済処理の遅延や停滞が連鎖的に他の取引に影響を及ぼす、いわゆるシステミック・リスクを大幅に低減することを目的としています。

RTGSは、決済処理の確実性と即時性を重視するシステムであり、特に高額な資金移動や重要な取引において利用されることが多いです。このシステムは、金融機関間の決済を円滑に進める上で不可欠な役割を果たしており、中央銀行が運営するシステムで採用されることが一般的です。これにより、金融システム全体の安定性を高める上で重要な機能を提供しています。

RTGSの仕組み

RTGSの主な特徴は、各取引が個別かつ即時に決済される点です。これは、例えば、ある金融機関Aから別の金融機関Bへの資金移動が発生した場合、その取引が完了した時点で直ちにAの口座から資金が引き落とされ、Bの口座に入金されるという仕組みです。この一連の流れが、他の取引に影響されることなく、即座に完了します。

この即時性が、決済処理における遅延リスクを最小限に抑えることに繋がります。もし、決済が遅延したり、複数の取引がまとめて処理される方式（ネット決済）の場合、ある取引の不履行が連鎖的に他の取引にも影響を及ぼす可能性があります。RTGSは、このような連鎖的なリスクを回避し、決済の確実性を高めるために設計されています。

RTGSと時点ネット決済

RTGSの対となる決済処理方式として、時点ネット決済があります。時点ネット決済では、一定時間内に行われた複数の決済取引をまとめて、その時間帯の最後に差額のみを決済します。この方式は、取引件数が多い場合に効率的な一方で、決済の遅延リスクやシステミック・リスクをRTGSよりも抱える可能性があります。そのため、それぞれの決済システムが持つ特性を考慮し、最適な決済処理方式が選択されるべきです。

RTGS採用システムと通貨

世界的に見ると、多くの国や地域でRTGSが採用されています。以下にその主な例を挙げます。

Fedwire：米国の連邦準備制度が運営するRTGSシステムです。アメリカ国内の金融機関間での大規模な資金移動を支える重要なインフラとなっています。
日銀ネット：日本銀行が運営するRTGSシステムであり、日本国内の金融機関間の決済を円滑に行うための基盤となっています。

また、過去には特定の通貨でRTGSが採用された事例もあります。

* RTGSドル（ジンバブエ・ドル）：ジンバブエでは、2019年から2024年までRTGSドルが使用され、RTGSシステムが採用されていました。

これらの例からもわかるように、RTGSは各国の金融インフラを支える重要な要素であり、経済活動の円滑な遂行に欠かせない役割を果たしています。

まとめ

即時グロス決済（RTGS）は、決済の即時性と確実性を重視した決済システムであり、金融システムの安定性を確保する上で重要な役割を担っています。このシステムは、個々の取引を即時に決済することで、決済の遅延や連鎖的なリスクを抑制します。RTGSは、各国の金融インフラを支える重要なシステムであり、今後もその重要性は増していくと考えられます。

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