厚別町下野幌

厚別町下野幌（あつべつちょう しものっぽろ）

札幌市厚別区に位置する厚別町下野幌は、区の最東端にあたる地名です。この地は、隣接する江別市との境界に接しており、かつては広大な範囲を指していましたが、周辺の都市開発や宅地造成に伴う分区を経て、今日では主に野幌森林公園に沿った自然豊かな非宅地化地域としてその名が残されています。

歴史

厚別町下野幌の歴史は、明治時代中期にまで遡ります。具体的には1885年（明治18年）、遠く九州の福岡県からこの未開の地に入植した石松弥七氏と小ヶ口石太郎氏の二人が、地域の開拓を始めた最初の人々とされています。彼らがこの地に足を踏み入れた頃、一帯は人の手が入っていない深い原生林に覆われた世界でした。生活を営む上で必要なものを現地で調達するか、極めて限られた手段で外部から得るしかない状況において、当時の入植者たちにとって、この豊かな森林資源を利用した「炭焼き」こそが、生活の糧を得るための文字通り唯一の収入源でした。彼らは困難な環境の中で原生林を切り開き、炭を生産しながら、一歩ずつ開拓の歩みを進めていったのです。その厳しい労働と粘り強い努力が、現在の地域の礎を築きました。

領域の変遷

かつて「厚別町下野幌」と呼ばれていた区域は、現在の厚別区の範囲の中でもかなりの部分を占めていました。しかし、札幌市の発展とそれに伴う人口増加、都市機能の分散配置などの影響を受け、この広大な地域は徐々に細分化されていきました。

高度経済成長期以降、大規模な住宅団地として開発が進められた地域は、新たに「青葉町」や「もみじ台」といった地名を与えられ、厚別町下野幌から独立しました。また、交通の要衝である新札幌駅周辺に商業施設や行政機関、高層マンションなどが集積し、札幌市の副都心機能が整備されると、この一帯は「厚別中央」として分区されました。さらに、札幌市が推進する研究開発機能の集積地として整備された札幌テクノパークの所在地も、「下野幌テクノパーク」という独立した地名として区画されるに至りました。

こうした歴史的な経緯による度重なる分区の結果、今日「厚別町下野幌」という地名が示す範囲は、都市化の波が直接的に及ばなかった、北海道遺産にも指定されている野幌森林公園の広大な自然に寄り添う形で残された、主に森林や農地、そして少数の公共施設などが点在する非宅地化地域となっています。かつての広がりを知る者にとっては、その名の指す領域が大きく変化したことが見て取れます。この地名の変遷そのものが、札幌市東部地域の発展の歴史を物語っていると言えるでしょう。

主な施設

現在の厚別町下野幌の区域、あるいはかつて厚別町下野幌に含まれていたより広範な地域には、地域の教育や文化に寄与するいくつかの主要な施設が存在します。

北星学園大学附属高等学校
北海道開拓の村（一部）

これらの施設は、地域の景観や機能の一部を形成しています。

参考文献

厚別町下野幌の地名や歴史に関するより詳細な情報については、『札幌地名考』（さっぽろ文庫1）のような郷土史に関する文献が参考になります。地域の歴史的背景や地理的な特徴を深く理解する上で、こうした資料は貴重な手がかりとなります。また、現代の行政情報や地域の現況については、札幌市厚別区役所の公式ウェブサイトなどから得ることができます。

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