厚見村茜部村組合立厚茜中学校

厚見村茜部村組合立厚茜中学校

かつて岐阜県稲葉郡厚見村（現在の岐阜市の一部）に位置していた公立中学校に、厚見村茜部村組合立厚茜中学校（あつみむらあかなべむらくみあいりつ こうせんちゅうがっこう）がありました。この学校は、日本の教育制度が大きく変革された第二次世界大戦後の学制改革の中で、新しい義務教育課程として発足した中学校教育を地域に提供するために設立されました。当時の厚見村と茜部村という二つの自治体が連携し、共同で運営にあたる「学校組合」を設立することによって、その設置が実現しました。組合立という形態は、単独の村では中学校設置が困難な場合に、複数の自治体が協力して教育施設を整備・運営するための一般的な手法でした。

学校の概要

厚茜中学校の教育が提供された区域、すなわち校区は、その名称が示す通り、設立主体となった厚見村と茜部村の全域を対象としていました。この地域に住む生徒たちが通学し、特に両村にそれぞれ設置されていた小学校、厚見村立厚見小学校と茜部村立茜部小学校を卒業した児童たちが、主な進学者となっていました。

学校の運営において、一つ特徴的だった点は、独立した専用の校舎を持たなかったことです。開校当初から閉校に至るまで、厚茜中学校は既存の小学校施設を間借りする形で教育活動を行いました。具体的には、厚見小学校の敷地内に中学校の教室群である「厚見教室」が設けられ、同様に茜部小学校の敷地内には「茜部教室」が設置されました。生徒たちは、それぞれの居住地域に近い小学校の教室で授業を受けることになったと考えられます。学校全体の管理・運営を担う校長室は、厚見小学校内に設けられた厚見教室側に配置されていました。このような分散型の教室配置は、戦後の資材不足や財政的な制約、あるいは急ピッチで進められた学制改革への対応といった当時の社会情勢を反映したものであったと推測されます。

沿革

厚見村茜部村組合立厚茜中学校の歴史は、非常に短いものでした。

1947年（昭和22年）4月1日、新制中学校制度がスタートするこの日に合わせて、稲葉郡内の厚見村と茜部村は正式に学校組合を結成しました。この組合設立をもって、厚見村茜部村組合立厚茜中学校は開校しました。しかし、この時点では新たな校舎の建設は間に合わず、前述の通り、厚見小学校と茜部小学校の既存施設の一部を間借りして授業を開始しました。
1950年（昭和25年）8月14日、学校が設置されてからわずか3年余りの期間で、その組織は再編されることになります。隣接する羽島郡八剣村に設置されていた八剣中学校との統合が実施されました。この統合は、より広範な地域を対象とした新たな中学校を設立することを目的としており、その結果誕生したのが厚八中学校です。厚八中学校の新設に伴い、厚見村茜部村組合立厚茜中学校は廃校となりました。これにより、厚茜中学校は短いながらも地域の教育史にその名を刻みました。

その後

厚茜中学校の廃止後、その教育機能は新設された厚八中学校に引き継がれました。厚八中学校はその後、自治体の合併などを経て、現在の岐阜市立厚八中学校へと発展しています。厚茜中学校は直接的な存続校ではありませんが、厚見村と茜部村の生徒たちが通う中学校として、現在の厚八中学校の源流の一つと言える存在でした。その短い歴史は、戦後の混乱期における学校整備の状況や、地域における教育機会確保のための努力、そしてその後の広域統合の流れを示す事例として記憶されています。

参考文献

この記述を作成するにあたっては、主に以下の文献を参照しました。

『厚見郷土史 上巻』 （厚見郷土史編集委員会 編、1986年発行） - 特に503ページから515ページにかけての記述を参考にしています。

関連項目

岐阜県中学校の廃校一覧

もう一度検索