原の辻遺跡

原の辻遺跡：古代日本の息吹を感じる場所

原の辻遺跡は、長崎県壱岐市に位置する、弥生時代前期から古墳時代初期にかけての大規模な環濠集落を中心とした遺跡です。この遺跡は、日本の歴史を語る上で非常に重要な場所であり、国の特別史跡に指定されています。

遺跡の概要

原の辻遺跡は、壱岐島の東部、幡鉾川の下流に位置しています。その広大な範囲は、弥生時代の大規模な環濠集落を中心に、墓地や祭祀の跡など、当時の人々の生活や文化を物語る様々な遺構を含んでいます。特に注目されるのは、『魏志倭人伝』に登場する「一大国」の国都である可能性が指摘されている点です。

「一大国」は、本来「一支国」の誤りであるとする説が有力ですが、この遺跡の重要性から、誤りではないとする意見も存在します。いずれにしても、この遺跡が古代の日本社会において重要な役割を果たしていたことは間違いありません。

発掘調査の歴史

原の辻遺跡の発掘調査は、1923年に始まりました。当初は地元の小学校教諭による小規模なものでしたが、戦後には九学会連合・東亜考古学会による大規模な調査が複数回実施され、多くの発見がありました。特に1993年の調査では、三重の濠を巡らせた大規模な環濠集落や祭祀建物跡、日本最古の船着き場跡などが検出されました。これらの調査によって、原の辻遺跡が大規模な集落であったことが明らかになりました。

現在も、長崎県教育庁原の辻遺跡調査事務所を中心に調査が継続されており、新たな発見が期待されています。

遺跡の構造と生活

環濠集落の規模は東西約350メートル、南北約750メートルにも及びます。この集落の東側には、『魏志倭人伝』に登場する役人の家や役所があったと推測されています。また、集落の北、東、東南には墓地が発見されています。

遺跡全体は100ヘクタールにも及ぶ広大なものであり、集落域は約24ヘクタールでした。発掘調査では、弥生時代中期の竪穴建物跡から炭化した米や麦が出土しており、この地域で水稲農耕が行われていたことが示されています。また、シカやイノシシなどの狩猟獣や、ウマなどの家畜の骨も発見されており、当時の食生活や産業を知る上で重要な手がかりとなっています。

石器に関しては、当初は石斧や石包丁などが使われていましたが、後期になると鉄器が豊富になり、手斧や鎌、刀子などが使用されるようになりました。鉄器の材料となる板状のものも発見されており、この地域で鉄器が作られていた可能性も示唆されています。壱岐島の鉄器は、舶載品であると考えられています。

史跡指定と復元

1997年、原の辻遺跡は国の史跡に指定され、2000年には特別史跡となりました。遺跡の保存と活用のため、史跡公園の計画が進められ、発掘された場所は一旦埋め戻されましたが、原の辻一支国王都復元公園として再整備されています。公園内には、弥生時代後期の建物17棟が復元されており、当時の集落の様子を体感することができます。

出土品と展示

原の辻遺跡から出土した貴重な遺物は、壱岐市立一支国博物館に収蔵されています。博物館では、土器や石器、鉄器など、当時の人々の生活や文化を物語る様々な資料が展示されています。また、原の辻ガイダンスでは、発掘の歴史や調査の様子が展示されており、勾玉づくりなどの体験や壱岐神楽の見学も可能です。

まとめ

原の辻遺跡は、弥生時代から古墳時代にかけての古代日本の歴史を解き明かす上で非常に重要な遺跡です。その規模の大きさや出土品の豊富さから、当時の社会構造や生活様式を知る上で貴重な情報源となっています。歴史に興味のある方は、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。

ギャラリー

（ギャラリーに関する情報は、提供されたデータからは特定できませんでした。）

参考文献

長崎県教育庁原の辻遺跡調査事務所『原の辻遺跡 総集編1』長崎県教育委員会〈原の辻遺跡調査事務所調査報告書30〉、2005年3月31日。
長崎県埋蔵文化財センター「Ⅴ.原の辻遺跡の保存整備と活用」『原の辻遺跡 総集編2』長崎県教育委員会〈長崎県埋蔵文化財センター調査報告書18〉、2016年3月31日。

外部リンク

原の辻遺跡
国指定文化財等データベース
長崎県埋蔵文化財センター
壱岐市立一支国博物館
* 全国遺跡報告総覧- 奈良文化財研究所

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