稚内ブルース

『稚内ブルース』 は、1971年（昭和46年）7月に日本のバンド、原みつるとシャネル・ファイブがキングレコードより発表したシングルです。この作品は、同グループにとって記念すべきデビューシングルとなりました。

バンドのフロントマンを務めた「原みつる」は、後にソロ歌手として知られるようになる平田満の別名義です。平田満は、『稚内ブルース』発表以前から音楽活動を行っており、1968年（昭和43年）には木立じゅんのデビューシングル『484のブルース』に楽曲を提供しています。また、1969年（昭和44年）には「原みつるとエリートメン」という名義で、シングル『ここは東京六本木』を日本コロムビアからリリースし、歌手としてのレコードデビューを果たしていました。

その後、キングレコードへ移籍し、「原みつるとシャネル・ファイブ」を結成。本作はその移籍後初の、そして新バンドとしての船出を飾るシングルとなりました。シングル盤の規格品番はBS-1390です。

本作には、メイン楽曲である表題曲『稚内ブルース』と、カップリング曲として『昭和女の子守唄』が収められています。

表題曲『稚内ブルース』の作詞・作曲は、1968年の矢吹健のヒット曲『あなたのブルース』を手掛けたことで知られる作曲家、藤本卓也氏が担当しました。

一方、カップリング曲の『昭和女の子守唄』は、作詞を山口洋子氏、作曲を藤本卓也氏というコンビが手掛けています。山口洋子氏と藤本卓也氏のタッグは、矢吹健の『うしろ姿』（1969年）や、1972年に五木ひろしが歌って大ヒットとなった『待っている女』など、数々の名曲を生み出しています。両楽曲のアレンジは、大津美子のシングル『優雅なる求愛』や、榎本美佐江のシングル『浜木綿小唄』（1971年）などでアレンジャーを務めた船木謙一氏が担当しました。

このシングルは、ジャケット表面に「ダイナミック演法第1弾!!」という力強いキャッチフレーズが印刷されており、バンドの音楽スタイルやライブパフォーマンスをアピールする意図があったことが伺えます。

『稚内ブルース』のリリースを皮切りに、原みつるとシャネル・ファイブは精力的に活動を展開しました。1975年（昭和50年）までの期間に、本作を含めて合計5枚のシングルを発表。さらに、オムニバス企画盤やライブ盤を含め、合計3枚のアルバムもリリースしています。

現在、本作に収録されている楽曲のうち、表題曲である『稚内ブルース』のみがCD音源として復刻されています。カップリング曲『昭和女の子守唄』のCD化は、今のところ実現していません。

最後に、本作に関する補足情報を加えます。
まず、この『稚内ブルース』は、オリジナル楽曲ではありません。1968年9月に小宮あけみがテイチク・UNIONレーベルからリリースしたシングル（品番: US-597-J）に収録された同名曲のカバーバージョンにあたります。
また、後年、歌手の鳥羽一郎が1988年1月に発表したシングルにも『稚内ブルース』という同名のタイトルを持つ楽曲が存在しますが、これは原みつるとシャネル・ファイブのバージョンとは全く異なる、いわゆる「同名異曲」です。
なお、このシングルの収録曲に関する出版権は、エー・ビー・シーメディアコムが保有しています。

1971年という年は、グループサウンズが衰退しつつも、歌謡曲が多様化し、新しい音楽ジャンルが登場し始めた時期にあたります。原みつるとシャネル・ファイブも、そうした音楽シーンの中で独自のカラーを持った存在でした。

もう一度検索