原ヘルス工業

原ヘルス工業株式会社：バブル景気とネットワークビジネスの光と影

原ヘルス工業株式会社は、家庭用超音波温水器『バブルスター』シリーズで知られた、かつて存在した日本の企業です。同社の興亡は、バブル景気期の急成長と、その後の急転直下を象徴する出来事として、今もなお語り継がれています。

急成長の背景：会員制組織と積極的な広告戦略

原ヘルス工業の社長、原全三郎氏は、成人向け雑誌の印刷や家庭用ラドン発生器の製造などを経て、家庭用超音波温浴器『バブルスター』の販売に着手しました。疲労回復やリウマチなどの症状に効果があると謳われた『バブルスター』は、当初は代理店を通じて販売されていましたが、原氏は会員制組織「ヘルシィバンク協会」を設立。会員による口コミ販売を展開することで、売上を飛躍的に伸ばしました。

会員には、販売実績に応じて段階的なマージンが支払われるシステムが導入されており、特に上位会員は高額なマージンを得ることができました。このシステムは、ネットワークビジネスに精通した人材を多く引きつけ、売上急増の一因となりました。

さらに、原ヘルス工業は積極的な広告戦略を展開しました。テレビCMには原氏自らがタレントと共演し、西城秀樹氏などの著名な歌手が起用されました。1ヶ月あたりの広告宣伝費は2億円にも上り、バブル景気下の消費者を惹きつけました。

栄光のピークと転落：薬事法違反と事業停止

1989年10月期には約620億円という驚異的な売上を記録し、原氏は高級住宅に住み、ロールスロイスを所有するなど、成功の象徴として注目を集めました。しかし、この栄華は長くは続きませんでした。

1989年12月、ヘルシィバンク協会が訪問販売法違反容疑で捜査を受け、その後『バブルスター』の入浴剤成分の未承認が判明し、薬事法違反で業務停止処分を受けました。さらに、韓国への巨額送金が発覚するなど、負のニュースが相次ぎ、急速に企業イメージが悪化しました。

巨額の負債を抱えた原ヘルス工業は、1991年10月に不渡りを出し、事業を停止しました。負債総額は170億円に上ったとされています。

事業停止後の展開と原全三郎氏の最期

事業停止後、原ヘルス工業は複数の組織へと分裂しました。元社員や会員の一部は、類似の商法を行う他の企業に移籍しました。原氏自身は、1991年3月に化粧品販売会社「ザ・マイラ」を設立し、『バブルスター』の販売を継続していましたが、2008年10月に香港で客死しました。

「ザ・マイラ」は2023年12月29日まで『バブルスター』の販売を続けていましたが、2024年8月31日の株主総会で解散を決議、同年11月15日に特別清算開始決定を受けました。負債総額は85億1,835万円にのぼります。

教訓：成功と失敗の両面

原ヘルス工業の興亡は、バブル景気下の急成長と、その後の急速な衰退という、両極端な状況を示しています。会員制組織による販売戦略、積極的な広告宣伝、そして法令遵守の重要性など、現代企業経営においても学ぶべき点が多く含まれています。また、ネットワークビジネスの光と影、そしてバブル経済の崩壊が企業経営に及ぼす影響についても、改めて考えさせられる事例です。

原ヘルス工業の物語は、成功と失敗の両面から、企業経営におけるリスク管理、法令遵守、そして倫理的な問題を私たちに問いかけています。

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