原中最秘抄

原中最秘抄について

『原中最秘抄』は、南北朝時代に作られた『源氏物語』に関する注釈書であり、河内方の研究者たちによって代々改良が施されてきました。この注釈書は、特に源親行による『水原抄』を基にしており、彼の子である源義行（聖覚）や孫の行阿によっても加筆・補足されました。最終的には1364年に行阿によってまとめられました。

書名の「原中最秘抄」は、『水原抄』の中から特に秘められた内容を抽出し、他の解説を加えたという意味を持ちます。ここでの「原中」は『水原抄』、また「最秘抄」は最も秘めた内容を表現しています。これは、他の注釈書に比較しても、特に秘密性の強い資料として位置づけられています。実際、河内方においても『源氏物語』の秘伝書としての側面を強調するための書が多く存在しましたが、本書がその先駆けとなったとされます。

この注釈書の特色の一つは、奥書において河内方の教えが文書化されている点です。具体的には、『源氏物語』54帖、河内本の54巻の『水原抄』、そして『原中最秘抄』の上下2巻が、河内方の教えの根幹をなしているという情報が述べられています。これにより、どのようにして河内方が『源氏物語』に関する理解を深めていったのかを知る手がかりが得られます。

また、注釈書には、源光行が疑問を解決するために自身の子にあたる源親行を藤原定家のもとに派遣して教えを乞うたというエピソードが記されており、これが河内方の学説が形成されていく過程を示す重要な記録として注目されています。ただし、注意が必要なのは、当初の考えが河内の学派に伝わったように改竄されている可能性もあり、批判的に読む姿勢が求められます。

『原中最秘抄』には、複数の逸書や有名な著名者に関する情報も含まれており、そのため文化史資料としても高く評価されています。本文は大きく分けて、略本系統と広本系統の2種類存在します。略本系統は、耕雲明魏が手掛けた略本であり、『群書類従』にも収められているほか、日本古典文学影印叢刊でも扱われています。対照的に広本系統は、完本とも呼ばれ、国立歴史民俗博物館による貴重典籍叢書の一環としても出版されています。

このように『原中最秘抄』は、ただの注釈書に留まらず、江戸時代以前の日本文学研究における重要な文献であると同時に、文化の発展に寄与した記録でもあります。歴史的な価値や学術的な意義は、現代においても広く認識されつつあると言えるでしょう。

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